獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200710-55

Re:ウサギの狂犬病
投稿日 2007年10月7日(日)19時24分 投稿者 プロキオン

ウサギの狂犬病というものに遭遇したことが無いので、正確なアドバイスにはなりませんが。
これは、ウサギが狂犬病に罹らないというのではなく、狂犬病に罹患して興奮期にまで至っている犬がウサギを咬んだとしたら、ウサギはボロボロに噛み殺されているのではないかと思います。少なくともかなりの傷を負っているはずですから、前の飼育者にその点を確認することくらいはできるのではないでしょうか?

>1、このウサギにかまれたことから、狂犬病に感染する可能性はあるでしょうか。

そのウサギが狂犬病に感染していれば、感染する可能性はあります。なければ、ありません。


>2、ウサギが狂犬病の犬に噛まれた場合、ウサギが狂犬病を発症するまでの潜伏期間はどのくらいなのでしょうか。

ウサギの潜伏期につては、存じません。人間の場合は長い例で1年を超えるそうですが、だいたいの範囲では半年以内ということで説明されています。多くの例では3ヶ月くらいで発症ということになるようです。
犬の場合ですと、3週間から半年くらいで発症するとの記載になっていますが、3〜4週間くらいで発症にいたるケースが多いようです。
これがウサギとなりますと、最初の方で述べましたように、狂犬病が発症して斃死するよりも、噛み殺されていたり、物理的な外傷の方でだめになっている可能性の方が高そうに思います。


>3、潜伏期間に噛まれても感染するのでしょうか。

狂犬病の特性として、ウイルス血症が起き難いというか、認めにくいという特徴があります。このことは、発症してウイルスが血液中に出現してくる時期(興奮期以降)にならないとウイルスに感染していても他者への感染が起き難いことを意味しています。
では、心配しなくてもよいのかというと、病気が病気ですから心配しないわけにはいかないでしょうし、咬んだ相手が罹患していることが判明しているのなら、暴露後接種をしないでよいということにはなりません。

一番肝心なことは、そのウサギが狂犬病に罹っていたか否かの確認が必要なように思います。
通常の場合であれば、繋留観察によって狂犬病による斃死を確認して脳の病理組織検査によってネグリー小体を確認することによって確定診断となります。このネグリー小体というのは、神経細胞において狂犬病ウイルスが増殖して形成されるものなのですが、昨年のフィリピンからの帰国者の症例の検査から、ネグリー小体以外にもウイルスは神経細胞やそれ以外の細胞にも分布していることがあきらかとなっています。ネグリー小体が検出されなくてもウイルスが広がっている可能性はあります。


>4、友達は心配なのでワクチンを接種しに行くそうですが、どのくらいウサギの様子を見たら 接種を中断してもいいのでしょうか。

暴露後接種というのは、国によって事情も異なるようですが、5〜6回の接種が必要です。動物に対しては暴露後接種という概念は適用されないはずです。
当然、人間への接種ということが前提になりますので、これについて獣医師が、いつ、中断したらよいかと述べるのは越権行為となるでしょう。この質問については、暴露後接種を実施する人間の医者が判断するべきです。

どのくらいウサギの様子を見たらというのは、「咬傷犬の繋留期間」にならってという意味ではないかと思いますが、これは安易なことを言うわけにはいかないと考えます。
ただ、咬んだだけでは発病期とは言えません。潜伏期か発病期なのかの判断ができない以上は、どれだけの期間、繋留観察をしたらよいでしょうという根拠がありません。

やはり、どのような経緯でウサギを譲り受けたのかは存じませんが、前の飼育者と連絡をとるのが、一番情報を得る道だと考えます。ウサギを守りたいのであれば、そうするしかありません。
今の飼い主は、ぴょんさんのですから、咬まれた子供の親御さんが狂犬病について言及されるのであれば、飼い主には相手の不安を取り除く責任があります。これは、要求があればウサギの脳を検査しなくてはならないというケースも含めてのことです。そのウサギが狂犬病に罹患している可能性は、かなり低いと考えられますが、それでもです。
ウサギを助けたいのであれば、ウサギが感染していないであろうという情況証拠はあつめなくてはならないと思います。
逆に、感染の可能性があるのであれば、ぴょんさんご自身もウサギを飼育していてはなりません。

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