意見交換掲示板過去発言No.0000-200803-20
Re:耳血腫についてお尋ねします |
投稿日 2008年3月9日(日)12時19分 投稿者 プロキオン
たまたまというか、私の病院でもごく最近に犬の耳血腫が2件来院しています。 犬における耳血腫は、猫における症例よりも治療に対する反応がよいように感じています。この2件とも内科的な治療で治りました。 ごんままさんの犬では、すでに3ヶ月が経過しようとしているということなのですね。 そして耳介の変形があり、血腫による腫脹もそのまま残っているということであれば、残念ながら治療効果が出ていると感じることができないのは無理からぬ点があるかもしれません。 この疾病は、一にも二にも治療を開始する早さにあると考えております。一番、即効性があった症例では、朝の時点でなかった耳血腫を昼前に気づき、午前中のうちに注射1本のみ接種で、夜半までには腫脹が無くなったというものです。この時には、耳から血液を抜くという処置もしませでしたが、きれいに治りました。 これに反して、発症から時間が経過してしまってから来院した症例は、どうしても期待するほどの治療効果が見られない傾向にあります。ただ、やはり重要なのは、耳介の変形萎縮を防ぐことにあると私は考えております。 耳介の皮膚と軟骨が遊離してしまった状態が続けば、外観を損ねますし、軟骨の破壊が進めば進むほど、耳の変形も重度となります。これは生命に関わるか否かという事とは別にしても、やはり看過してはいけないことだと思います。内科的にコントロールできないんであれば、できるだけ早期に外科的な処置を講じて、耳介の変形を防ぐ措置を講じるべきではないかと私は思いますし、まして飼い主さんからの要望が出ているのであれば、これを断るほどの問題の多い手術でもないと考えています。 私もかつては、内科的治療に自信をもっていたので、外科手術自体に抵抗感をもっておりましたが、発症から日数が経過してしまった症例であれば、内科的にコントロールできない症例にはそこそこ遭遇することになります。 そんな中で、私がてこずっていた症例を他の先生がさっさと切ってしまったことがあり、いささかなりとも私が思いあがっていたことを実感させられました。飼い主さんの願いは耳が変形しないことに目的があるわけであって、方法にこだわっていたのは、私自身の驕りであったわけです。以来、内科的な治療を優先していますが、「見切り時」も重視するようにしています。とにかくボコボコの耳にしてしまわないようにと心がけています。 最初の方に話が戻りますが、3ヶ月経過していて、すでに耳の変形があるのであれば、この変形した耳は元の形態には戻らないかもしれません。手術というのも、耳介内に血腫が形成されないようにというものであって、破壊されてしまった耳介軟骨を修復するというものではありません。 まだ血腫を形成するような出血や炎症が継続しているのであれば、これ以上の悪化を防ぐためということになりますが、今、存在している血腫が3ヶ月前のものであって、そのまま残っているということですと(新たなものでないという意味です)、あらためて手術の適否を検討する必要があります。このあたりの見極めも大切なように思います。 最善の治療法についての御質問ですが、これは方法ではありません。どのような方法・どのようなアプローチであるかではなく、耳介の変形・萎縮を防ぐことが大切なのです。 目的が山頂を極めるということであれば、どこの登山口からどのようなルートをとろうともよいのです。所要時間を重視する者、景観を重視する者、あるいは一緒に登る者に併せてルートを選択することは自由でよいと思うのです。目的は、キチンと目的の山の山頂にたどり着くことだと思うのです。 ただし、道に迷ってしまったり、閉鎖されている登山道に入ってしまったりしたら、引き返したり、臨機応変な対応をとる必要性はあるように思います。
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