獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200805-72

医療過誤の検証について
投稿日 2008年5月7日(水)16時03分 投稿者 プロキオン

人間の医療過誤問題についてをお考えいただくと分かるかと思いますが、必ず法医学の分野での検証が行われます。その上で、現行の医療水準に照らし合わせて一連の診療行為の結果と一致しているか否か、あるいはどこに相違があるかを調べます。
それがあってから、では、どこに問題があったのかということになります。

1、誤診があって、見当違いの治療が為されていた。
2、診断も治療方針も妥当であったが、治療行為でなんらかのミスが生じた。
3、すべてのことが正しく実施されていたが、患者は死亡した。
4、現行の医療水準では、まだ標準的な診断や治療指針がなく、妥当か否かの判断をしかねる。
大きく分けてしまえば、このような感じかと思いますが、動物医療の場合、判断材料を得るための法医学的検査にあたる部分を担う場所がありません。これは法医学とは言っていますが、実際には病理学的検査です。
病理学そのものは、獣医学の中にも存在していますし、大学でも教えています。教えてはいますが、この道は奥行きがありまして、専門家としてやっていくことができる者は限られています。日常では、需要がないために大学や広域化した検査機関でもないと職種として成立しないのです。
病理学を学んだことの無い獣医師はいないはずなのですが、裁判で医療過誤を争点とするようなケースにおいても通用するレベルの病理学者は、ここそこにいるということではありません。
そして、これに現行の臨床分野における医療水準を熟知している者という要素も求められます。

動物病院に罹っていたのにも関わらず、動物が亡くなってしまったという場合ですと、いつもの繰り返しになりますが、病理学的検査を実施して死因の究明をする必要があります。私達、街の臨床医であれば、患者の状態と治療の経過を逐次見ていることができなければ、診断や治療が妥当であったか否かは判断できせん。
( 人間の場合は、だいたいが2か3ということになると思いますが、動物病院の場合は、相互のやりとりにおける感情的な要因となってしまっていて、原因などすでに関係なくなってしまっている例も多々あります )
判断できようはずもない症例のケースで、意見を求められても応じようがないですし、同意や賛同を求めるための書き込みであれば、より一層レスしがたくなります。

検証機関を設置して欲しいという意見もあるでしょうが、それは向かって言う相手が違っています。ここは、公共の機関が設置しているサイトではなく、個人開設のサイトです。
そして、出入りしている者も、みな個人にすぎません。
検証機関の設置に目処がついたので、そこで働いてくれる獣医師を捜していますという書き込みであればまだわかりますが、検証機関をつくってくれと頼まれても、やはり応じられるものではないのです。個人にできることと言えば、自分はミスをしないように注意しようというだけです。
身近なところに結果だけを求められても困ってしまいます。

「獣医師だから」というのも その理由にならないと思います。その理屈が通用するのであれば、「人間だから」という理由で、カンボジアやラオスの難民、パレスチナの難民等を自宅に受け入れざるを得なくなります。少々乱暴な例えとなってしまいましたが、それが可能な人もいるかもしれませんが、多くの人々はおいそれとできないことだと思います。まして、他人から、そうするべきだと強制するかのようなことを言われたら、受け入れ云々よりも拒否の気持ちが先にたってしまうのが人情でしょう。

獣医師に理想を重ねるのはありがちなことですが、実際に診療に携わっている獣医師もやっとこさのことが多く、有り余る余力をもっているということではありません。自分にできる範囲の事、自らの力量を承知していれば、なおのこと、安請合いはしないものです。
私は、自分の患者がまず第一ですし、見たことも触れた事もない患者に対して一生懸命に尽力するということはできません。というか、それ自体が不可能な事ではないでしょうか。

なお、この投稿は特定の方に対しての意見ではありません。

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