獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-200806-99

Re:Re:Re:Re:Re:FIPについて教えてください。
投稿日 2008年6月19日(木)18時33分 投稿者 プロキオン

>仮に、ある猫のコロナウィルスが、既にFIPウィルスに変化してしまっていたら、FIPウィルスとして感染するのかというようなことが、2度目の質問でした。

この質問は、かなりむずかしい質問だと思います。私の意見はたぬどん先生とは、少しニュアンスが異なります。
正確には「わからない」と答えるべきかなと考えています。獣医師の中でも感染しないという意見もあります、感染するよ、そもそも伝染性疾病だろうという意見も至極当然な意見です。
なぜ、そのようなことになるかと言うと、病気としての伝染性腹膜炎とコロナウイルスの感染とは同じではありませんし、下痢をおこすコロナウイルスはそれこそ蔓延しています。この辺りの事は、この病気について調べれば、どこでもなんどでも目にすることになっていると思います。
つまり、発病している猫のFIPウイルスの由来が、おそらくほとんどの症例では、以前に感染してしまっていたコロナウイルスの変位に由来しているであろうということであって、直接発病している猫から感染したということが証明しがたいからです。
病態発生からの理屈でいけば、他の猫からの感染を想定するよりも、自分の体の中での変異にこそ注目があるわけであって、その元となるコロナウイルスは、それこそ蔓延している。変異したFIPウイルスに感染するしないを懸念するよりも、自らの体の中にこそすでに敵は存在しているということになりますね。
ですから、私達臨床医の立場から言えば、コロナウイルスの抗体を保有しているのであれば、その猫の体内でのウイルスの変異にこそ注意していてくださいという説明に終始することになるのです。

また、FIPウイルスそのものも、猫の体内で免疫グロブリンに捕捉されてしまって、この免疫複合体にさらに別のグロブリンが付着してさらに免疫を刺激してという現象が起こります。この機構が働いているかぎりは、そう簡単に自然に排泄されてきにくくなっています。伝染性腹膜炎の本態は、ウイルスではなく、アレルギーにも似た異常な免疫反応ですから、その分さらにFIPウイルスが他の猫へ感染するか否かは直接の問題とはされにくいこととなります。
それ故に 感染しないという意見も多いわけなのです。もっとも、大学の先生の中でも いやいや感染するよという意見の先生もおられます。実験感染をすれば、やはり感染するであろうと私も思いますし、個人的な経験の中でも、ある雄猫に咬まれた兄弟猫すべてが発病した例もありましたので、感染するであろうと個人的には考えております。(その咬んだ雄猫自身も発病しています。)
飼い主さんへの指導でも、飼育器具や生活環境の消毒等も当然他の猫への感染防止を目的としています。
ですから、飼い主さんは、感染するものとして対応していただくことの方が良いと思います。ただ、上記のたまさんの御質問は、あまりにもドン真ん中の質問ですので、「よくわかりませんが、感染するものとして対応してください」というなんだかあいまいな事になってしまうのです。
心配されている方にこのような言い方をするのは、お気に触るかもしれませんが、感染はするかもしれないが、問題は他にあるということにでもなりますでしょうか?


# 生物としてのFIPウイルスは、他者に感染せずに宿主と共に死滅してしまっても、下痢を引き起こす方の本来のコロナウイルスが存在している限り、とくに支障はないようです。一旦、変異して生じたFIPウイルスは、そのくらい激しい自滅への道をたどっていきます。

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