意見交換掲示板過去発言No.0000-200901-22
Re:肝炎と悪性リンパ腫の診断 |
投稿日 2009年1月10日(土)10時54分 投稿者 だぬどん
情報というより、ここは獣医師として日々経験していることを書いてみたいと思います。 獣医師の仕事で一番難しく、重要なのは診断を下すことです。 一般的には、「仮診断→検査→診断の確定または修正→治療→ 診断の確定または修正→検査→診断の確定または修正→治療→…」 という感じで、診断を固めつつ治療を行います。 その際、獣医師には様々な葛藤や迷いが生じます(なにしろ命を預かっていますので)。 よく経験するのですが、 1.「あれ、おかしいな」と感じたら、その感覚は大事にしたほうがいい。 「あれおかしいな」を放っておいて、後悔することは多い。 2.最初の仮診断にこだわりすぎると、いろいろなことが逆に見えなくなってしまい、 判断を誤ることが多い。常に柔軟に、こだわりを捨て、考えを修正し続けることが必要。 この二つは、ある意味矛盾しているけれども、どちらも重要なことです。 今回の質問の例で言うと、「あれおかしいな」と感じたのであれば、 リンパ腫の疑いについてはいちおう警戒を持ち続けた方がいいかもしれません。 あるいは、リンパ腫ではないが、何か別のことのサインであるかもしれません。 その一方で、最初のリンパ腫という仮診断にこだわりすぎるのも、 決して望ましいことではありません。 この辺、行きつ戻りつ、悩んだり迷ったりというのは、 治療を行うにあたって常に付きまとう苦しみです。 素人であれば、「あれ違ってた」で許されますが、 動物の命を預かるプロとしては、ものすごいプレッシャーと戦いながら、 日々の診断と治療を行っています。 まあ、質問を読んだ限りでは、現時点では、大学病院で切除生検を行って、 胆管肝炎という診断がでているのであれば、 当面は胆管肝炎の治療を進めるのが筋であろうと思います。 おっしゃるようにリンパ腫その他の病気の見落としの可能性もないとは言えませんが、 トータル的なリスク等を考えると、現時点で生検を何度も繰り返すのは、 あまり上策とは思えませんが、どうでしょうか。
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