意見交換掲示板過去発言No.0000-200911-43
Re:教えてください |
投稿日 2009年11月27日(金)12時28分 投稿者 プロキオン
結核菌というのは、ミコバクテリウム属の細菌であって、大まかに分けますと人型菌、牛型菌、鳥型菌の3つを想定すればよいかと思います。 これらの3種類は、相互に感染するというのではなく、一定の方向への感染が成立するということで、公衆衛生の分野でよく試験問題に出題されますが、結論からいけば、人型菌が一番問題です。牛型菌の人への感染というのも家畜保健衛生所がツベルクリン検査によって感染牛を摘発することとなっており、ずっとその検査と摘発淘汰が継続されてきている経緯があります。 御質問にある人型結核菌の犬への感染ですが、犬における感染源としてはやはり一番可能性が高いようで、過去のデータでは犬への3つの結核菌の中では、感染源としては6割を超えると記述されています。犬には牛型、鳥型も感染が成立しますので、これは、それだけ人間との接触の密度を反映しているということになるように考えられます。 ただ、ここで言及しておかなくてはならないことがありますが、それは結核菌の特性です。結核菌を始めとするミコバクテリウム属の細菌は、菌体の外周を極めて厚い壁のごとくの膜で覆われているという特徴があります。この壁のおかげで消毒薬や抗生物質が菌の体内に届きにくく薬剤による殺滅が手間がかかるということになっております。 しかし、この壁が逆に菌の生命活動に必要な成分の取り込みにも足枷となっていて、発育や増殖の遅い菌となっていて、さらに通常の細菌との競合においては結核菌が遅れをとる原因となっています。 つまり、結核菌を増やそうとするなら、消毒や生存環境のPHを特定の方向に傾けたり、抗生物質をやたらめったらな使い方をしたりという行為が必要となります。そうでもしないと自然環境の中では発育増殖が極めてしにくい細菌であるということになります。結核菌自身にとっても、他者への感染成立が普通の細菌ほど容易ではないということになるのです。 犬への感染の可能性となると、患者さん御本人が結核菌をどの程度排菌しているのかということに左右されます。幸いなことに感染している御家族も結核菌の排菌が見られるということでもなさそうなので、飼育されている犬への感染の危険というのは、他の御家族への感染の危険度と同レベルと考えてよろしいかと思います。 人型菌であるからには、人から人への感染の方が、人から犬への感染よりも成立しやすいはずです。 ただ、犬においては診断というのは、人間よりも面倒になります。これは犬においてはツベルクリン反応が当てにならないからです。レントゲンにおいても確認できるのは、病巣が形成されてからでないとわかりません。そのためか、診断がつくときには、すでに進行してしまっていることが多く、治療の対象とならないことが多かったようです。
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