獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201001-23

Re3:文鳥の突然死
投稿日 2010年1月25日(月)10時53分 投稿者 プロキオン

呼び名が、コッコとククでしたか。可愛がっておられたことと存じます。
鳥類においても、やはり数多くの疾病があり、その中には相当数の伝染病や伝染性疾病が知られております。2羽がある日突然に亡くなっていたということであれば、普通は、伝染病のような感染症か、事故から疑っていかなくてはならないように思います。

鶏のような家禽であれば、それらの伝染性疾病に対しても、ワクチンが流通しており、病気の侵入をあらかじめ防ぐ手立てというのもあります。
けれども、趣味として飼育されている鳥達となりますと、これらワクチンの恩恵からは遠いところにあります。せいぜいが、鳩の飼育者間で鶏のワクチンを流用しているくらいのことでしょう。鳥は、とくに小鳥は自分自身の体調不良を隠します。少しでも具合が悪いそぶりを見せると、そのことが捕食者に目をつけられる要素となって、自分自身の不利に働くからです。ですから、最後まで弱ったそぶりを見せようとしません。小鳥が羽を膨らませて床に下りてしまっているときは、すでに危篤状態に近いものとして、慎重対処するようにというのは、小鳥を診療する獣医師の間で言われている事です。そのくらい、小鳥は病気を隠します。

また、事故の方では、鍋の中への落下とかドアにぶつかる、足の下にいたというのがよく耳にするところですが、フライパンや鍋の空焚きによるガス中毒というのも多いです。鳥類は気嚢という器官を有しているために、哺乳類と少しばかり違ったところがあります。人間が高山病となるような高所のさらに上空を酸素欠乏による高山病にかかることなく悠然と飛翔していきます。それだけ酸素をはじめとしてガス交換の機能が高いのではないでしょうか。また、だからこそガス中毒に弱いとも言えます。
かつては、炭鉱において坑道にカナリアを連れて入り、ガスの発生をカナリアの様子から知るという防御策がとられていましたし、オウム真理教施設への立ち入り調査の際にも機動隊の先頭には小鳥を入れたケージがありました。
私が調理師のコックさんでしょうかとお尋ねしたのは、実は、このような調理器具から発生するガス中毒が発生する要素があったのかを知りたかったからです。普通の調理の際には事故につながるような事は起きませんが、空焚きがあるとガスが発生します。

病気にしろ事故にしろ、亡くなった原因を知ろうとすれば、思い当たる点とそれを一つずつ検証していく手順が必要となります。私は病性鑑定の仕事をしていた経験があります。それは、物言わぬはずの動物が、亡骸が語りかけてくる声に耳を傾ける仕事でした。飼育者からもさまざまにお話は聞くのですが、事実を教えてくれるのは亡骸であることの方が多かったです。
死者が教えてくれること、語りかけてくれること、そういうメッセージも、受け手の側にそれだけの目や耳がないと聞き逃してしまいます。私達は、そのようなメッセージを聞き逃さないだけの知識を学ばなくてはならないと思います。
そして、その知識は起きてからではなく、これからおきるかもしれない事を未然に防ぐことに役立ててこそ、メッセージが生きてくるように思います。

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