獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201005-13

Re:うさぎの乳腺癌
投稿日 2010年5月13日(木)19時34分 投稿者 プロキオン

>半年前に健診に行った際にはなかったので、まだ初期かもしれません。

動物の場合は、半年という期間は必ずしも短期間とも言えませんので、なんとも言えないと思います、半年あれば腫瘍が育つには不足のない時間でもあります。
ですが、むしろ、急速に大きくなる腫瘍の方が私としては気になります。腫瘍は細胞の塊ですので、全体の大きさや組織構造というよりも、腫瘍を構成している細胞の悪性度如何によるところが大きいです。

>獣医さんは、( 中略 )という事などを丁寧に説明してくださり、あまり手術に前向きではありません。

主治医の先生の判断が妥当であるかどうかは、私には分かりかねます。患者であるウサギを診察してみてからでないと分からないことですね。
ただ、飼い主さんの希望が手術であるのなら、それは遠慮なさらずに伝えるべきです。
飼い主さんの希望を承知の上で、なおかつ手術をするべきでないという考えであれば、獣医師の方も、それなりにきちんとした理由で説明するべきであると考えます。お互いに遠慮しあっていては、話も進みませんし、誤解のもとともなりかねませんので。

>また、手術が転移のトリガーになる事もある・・・と知り合いに聞きましたが、そういうこともあるのでしょうか

理論上は、充分なマージンを確保して切除しているのであれば、問題とはなりませんが、残念な事に縦横のマージンはなんとか確保できても、深さのマージンは確保しがたいことがあります。
また、腫瘍本体にメスが入れられていなくても、すでにリンパ節に細胞が達しているというケースも考えうることです。
手術するから転移するというのではなく、手術を検討しなくてはならない大きさに達していれば、すでに腫瘍細胞が動いてしまっている可能性は、常に考えないとなりません。術前にレントゲンを撮影していても、細胞レベルの段階では転移を把握することはできないでしょう。手術するから転移するというよりも、手術の侵襲によって腫瘍細胞を排除する体細胞性免疫が疲れてしまい、腫瘍細胞にとって都合がよい状態になりやすいということもあると考えられます。
いずれせよ、手術するしないに関わらず、ある程度の大きさの腫瘍であれば、転移のことは考えていていただく必要があります。

セカンドオピニオンという言葉は、近年よく口にされますが、正しい意味でのこととなりますと、最初の病院よりもさらに上のレベルの病院に行っていただく必要があります。
これは、最初の病院と2番目の病院が、同レベルであれば、仮に意見が異なった際にどちらの意見を聞いたらよいのかがわからなくなるからです。2番目の病院の判断がいつも正しいとは限らないからです。このため、同レベルの街の病院であれば、セカンドオピニオンとするには、複数の病院で診察していただいて、妥当な診断結果に巡り会う必要があります。今回のケースですと、飼い主さんは手術を希望されているわけですから、手術してくれるという病院の判断が妥当と考えられてしまうかもしれませんが、最終的な結果として、どちらのケースがウサギのためになるのかは、早々簡単には分からないと思いますし、それが分かるのは結果論です。
結果論でしか分からない事であれば、飼い主さんの意向優先でよいのですが、結果の責任というのは、飼い主さんに帰すことになります。
あまり面倒に考えずに、何軒かの動物病院をまわって、さまざまな先生と会って話しを聞いてみるというところがよいのではないかと思います。そのうえで、手術にチャレンジしてもよいという先生がいらしたら、お願いしてみるということでよいのではないでしょうか? 多くの病院で二の足を踏むというのであれば、それはそれだけ困難なケースであるということになるのではないかと思います。

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