獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201312-166

Re3:猫の耳下腺癌
投稿日 2013年12月19日(木)12時47分 投稿者 プロキオン

今回は、ムクムク先生珍しく一歩踏み込んだレスを書かれておられますね。そこにつられて私も一言。

私はインフォームドコンセントという言葉が嫌いでして、あまり良いイメージをもっておりません。「説明と同意」ということになりますが、どうも決定権を飼い主さんに委ねて獣医師が責任回避していることになってしまいはしないかと感じるところがあるからです。
充分な説明というのは、当たり前のことであって、わざわざこのような言葉を持ち出してしなければならないものだとは思っておりません。 また、飼い主さんにしても数ある選択肢のなかから最善のものを選びえたという実感をおもちになることができるのでしょうか?
兄弟子に言わせると、あっさりと「逃げだよ、可愛そうなことはさせるなよ」と言われたこともあります。その兄弟子に言わせれば「患者と飼い主の双方を診て、自らが思うところへそれとなく誘導してあげるのが、獣医師の仕事」なのだそうです。飼い主さんが積極的に意見を伝えてくるのであればかまわないのですが、飼い主さんに最終責任を押し付けてはいけないと考えています。
まあ、「飼い主さんが最終責任を負わなくてどうする?」というのは、まさに正論であって、否定できるものではないのですが、やはり獣医師も多少なりとも責任一旦は負ってあげてもよいのではと思います。
インフォームドコンセントの考え方から言えば、今回、ムクムク先生は少しばかり踏み出してしまっているように感じますが、これは批判というのではなく、私は支持する方ですね。

と言いますか、我家の猫が昨年の12月始め頃から左耳のわずかに前方から膿汁を排泄するようになり、下顎から耳にかけて腫瘤が形成され急速に大きくなって同様な状態になりました。どう考えても異常なものであり、今のうちなら切除も考えたのですが、腫瘤を切除した痕の皮膚の再建に、どうしても皮膚が足りないようでした。
私は切除すべきか否かでかなり迷いましたが、奥さんが言下に切除を否定しました。13歳の雌の黒猫でしたが、削痩が進み、口も開かなくなって、彼女が私達を呼んで鳴く都度何かしら不条理を訴えられているようで辛かったですね。
sumireさんのレスで最後の方でおっしゃられているように、選択肢が複数あるのであれば、いずれの方法を選択しても、後々、これで良かったのかと言う想いはつきまとうのではないかと私は思うのです。むしろ、なにも後悔するところはないという方が稀なのではないでしょうか。
そんなときに、私も同じ選択をしましたよと言ってくれる人が居てくれたら、少しは気持ちが軽くなるのではないかと想うのです。
「飼い主が決めたことだから、それで良いのです」というよりも「私もそうしたと思います」と言う方が、あっさりとしているけれども、伝わるように思えます。


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