毎度お騒がせいたしております、わに語りのやぎねこです。
わにもちょと落ち着いたので、また書きに来ました。

【最初の大笑い】
それは、子犬の名前が決まってまもなくのことでした。
壺庭の物干場は、物干し竿を父が自分の身長に合わせてつけてしまったので、
背伸びしても届かない母のために下にブロックが幾つか置かれていました。
最初はある程度間隔を開けていたのですが、そうすると洗濯物を干すのに
気を取られたときに、踏み外して怪我をしてしまうので、足を落とさない
くらいの巾に数を増やしてあったのですが……。

朝、犬を庭に放すのは、いちばん最初に起きた人の役目でした。
その日の早起き一番は、弟でした。
「おはよう」を云うのを楽しみに洗面所から外に通じるドアを開けた彼が
見たのは、ブロックのすきまに仰向けになって四肢を突き上げている犬の
おかしくも哀れな姿でした。
「おかあさんっ！、くろ（わに）が死んでるっっ！」
びっくりした弟の叫びに、びっくりしたくろも飛び起きました。
……おいっ。
そうです、くろはブロックにはさまった形で爆睡していたのでした。
それも、ここのドアは二重で、それぞれに鍵が付いているのを開けた音にも
気付かずに眠りこけていたんです。

「番犬失格だ……」、壺庭から飛び出して、庭の中を転げ回るくろを見ながら、
みんながそう思いました。