獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200207-84

運動
投稿日 2002年7月23日(火)01時27分 はたの

あの、くれぐれも、運動量を増やすのは涼しくなってから(寒冷地で日中以外なら別として)、というのを前提としまして。
 また、どの程度運動不足か、筋肉が足りないのかは、やはり獣医師にまずご相談のうえ・・・。成長期、骨格が固まるまではそんなにみっしりと筋肉はつかないものですから。ましてや膵臓が悪いのでしたらなおさらに、安易に鍛えるのは危険ですから。

 「爪の先端から血管の先端までの距離」は、単純に運動量ばかりでもないような気がしています。土の上を多く走っているイヌの爪というのはかなり尖ります。爪というのはU字を伏せたような、上と横が硬くて、下側は軟らかいので、「土に刺さって」運動すると尖るのです。すると血管があんまり先端までは来ないようで。
 舗装路上がほとんどだと太いままぶつっと終わりますので、比較的先端近くまで血管がくるようです。

 で、筋肉をつける運動ですが(普通にバランスのいい食餌管理はこれも前提として)、「芯のしっかりした筋肉」のためか、「見た目のいい筋肉のためか」によって異なってきます。
 ヒトでいうのなら、前者は肉体労働や筋トレ以外のスポーツで、ゆっくりと時間をかけて作られたもので、運動を休止しても割と保ちます。後者はボディビルないしそれに近いような部分重点負荷で作るもので、運動やめたら落ちます。
 イヌの場合、ショウに出そうってんでないかぎり、後者の筋肉はあまり必要ないかと。せいぜい、ゆっくり歩いて坂や階段の上り下りで胸・腿を鍛えるなど、特に脆弱なところを補うためぐらいで。
 基本的には普段の生活に組み込まれた普段の運動で普通につく前者でよく、好ましい普段の運動とは、歩く・トロット・キャンター・ギャロップのバランスのいい組み合わせ+ものを咬んだり振り回したりプロレスごっこしたり。要するに獲物を探して歩いて歩いて走って襲撃して襲って殺して、という野生イヌの生活パターンを基本に、犬種や体型で適宜アレンジ、と。
 Eスプリンガーですと、トロットとキャンターの中に急な方向転換と短いギャロップが入るのを数分ないし10分ぐらい続ける、同じぐらいの長さの休みを挟んで数セット、というのが、犬種の狙いとしての使われ方でしょう。最大速度近くで続けて走るタイプではなさそうです。キャンター/ギャロップの時には背骨を大きくしなわせて頭を振って走りますから(どちらかというと馬のように背骨を真っ直ぐ保ったまま、トロトットから中程度のキャンターでペースを保って何時間も走り続けるハスキーの走り方や、遅めのトロット得意な柴の走り方などと比べてみてください)。

 もっと深みにはまりたいとお考えでしたら、専門書を漁られることをお勧めします。
 まずはヒトの運動生理学の本。種が異なるぶんの読み換えは要りますが、基本は似たようなものですから。また、膵臓が悪い場合の健康増進のための運動、の解説を裂かず野もイヌ対象よりヒト対象のほうがまだしも簡単そうです。
 ついで運動制御、たとえばロボットの本。2足歩行と4足歩行の原理的な差異などが、前記「読み換え」に役立ちます。(実際のカロリー消費は別として)原理としては、2足歩行のほうが経済的だったりするのです。むろん、動物の運動の本でもいいのですが。
 3番目に、ウマの本。高価なものが多いので図書館などご活用あれ。競馬馬は血統が重く訓練期間が短く訓練ノウハウがひとくされる傾向があるので、馬術競技馬の本を。障害馬だと6年ぐらい、馬場馬術馬だと10年ぐらいかけて、丁寧に体を作るものでして、参考になります。
 最後にイヌの本。なぜ最後かというと、私の知り得るかぎり、犬種・用途に特化していて、きちんとした生理学的な裏付けよりも個人の狭い経験に頼る傾向が強く、ときにトンデモだったりもしますので、個々のテクニックの応用の可否を検討できる程度の常識を踏まえてから読まれるほうがよいように思えるためです。

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