獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200302-23

いろいろ、
投稿日 2003年1月10日(金)16時39分 プロキオン

こちらの掲示板には本当にお久しぶりのおじゃまです。

「片睾丸」
腫瘍になりやすいというのは、誤解があるというか、説明不足があるように思
います。
動物と言うのは、すべからく基本は雌なのです。繁殖用に特化した形態が雄で
あると考えて下さい。
つまり、雄の精巣組織においても、雌の機能は残存しています。胎児の時にお
いては雄性ホルモンをつくる細胞の方が先に活動を始めますので、この個体は
雄としての性的特徴を得る事になりますが、分娩後は精巣が陰嚢に下がって、
雄性ホルモンを優位に雌性ホルモンを抑制するように温度差による補助が働く
必要があります。
片睾丸のように体内に留まり続けると、やがて雌性ホルモンをつくる細胞の機
能が雄の機能を上回るようになります。これは雌のホルモンを作る細胞組織が
どんどん大きくなって精巣が腫大するためです。
この反応はそれぞれのホルモンをつくる細胞が働きやすい環境があるというこ
とであって、多くの場合は生理的な反応であり、腫瘍ではありません。

乳房が腫大して大きくなり、陰嚢も雌の生殖器のような外観を呈するようにな
りますし、雄犬であるのにもかかわらず、他の雄犬につきまとわれるようにな
ります。
確かにそのままの状態で放置しておけば本当に腫瘍化する可能性もあり、体内
精巣が腫大して雌化した時点で手術する方が良策と言えます。

厳密な意味での「腫瘍化」というのは、さほど高い頻度であるわけではありま
せんが、今述べたような精巣の腫大はかなりの個体において見られる現象です。
手術の際の麻酔の危険度とは比較しようがありません。
したがって、動物病院では「腫瘍化するおそれがある」として手術を勧めるの
が常です。本当に詳細な説明をしてしまうと、かえって飼い主さんが軽く考え
てしまいがちなのです。
体内に残存する精巣が腫大してこれが悪戯するというのは、腫瘍化する可能性
よりも高く、それ自体も問題のあることなので手術をためらう理由はないでし
ょう。腫大している精巣であれば、腹腔内でも捜しやすいと言う利点はありま
す。


「椎間板ヘルニア」
椎骨における造窓術というのは、大変なのでまず内科的に減圧をはかるという
先生が多いように思います。
昨今はレーザーメスで、透視をかけながら、髄核の一部を蒸散させるという方
法も試みられているようです。こちらの方法であれば、骨の一部を切除して神
経組織を横目でにらみながらとは異なって、犬の負担も術後の介護もずいぶん
楽になるはずなのですが、欠点としてまだどこのだれでもというわけにいかな
いところです。


「フィラリアの治し方」
たちうおさんの疑問はもっともですが、獣医学科の学生でもそういう具体的な
内容は教わっていないのが普通なんです。
大学は勉強するための基礎を教えてくれる所ではありますが、獣医学の中の診
療を教えてくれるところではありません。国家試験に合格すれば、獣医師の資
格は与えられますが、診療できるということではありません。
どの分野の獣医師になるか進むべき道を選択するスタートラインに立ったにす
ぎません。臨床家を目指すのであれば、そこからが本来の勉強の始まりといえ
るのです。
ですから、ののさんの書き込みというのも私には不思議ではありません。おい
おい、大学病院や町の臨床家のところへ顔をだすようになれば、ののさんにも
分かってくると思います。
せっかくのお近づきの機会なのですから、たちうおさんもののさんを応援して
あげて下さい。
ののさんも、飼い主さんの声に耳を傾けるというのも獣医師としては大切な仕
事ですので、そういうことも学んで下さいね。

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