獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200310-145

ワクチンは危険?
投稿日 2003年10月17日(金)13時13分 プロキオン

>あえて、書き込みますが・・・

私から拝見すると、誤解にもとづいた内容のように思えますが…。


>接種によって、てんかん等の「脳の病気」が増えてるようです。

このような事実は、獣医師の間では認識されていないはずです。
ワクチン接種にまつわる副作用としては、発熱、不整脈、アナフィラキシー等
が知られています。
ワクチン接種によって癲癇が発生すると言う副作用報告が動物用薬品検査所に
寄せられている事実は耳にした事がありませんし、獣医師仲間でも話題になっ
たことはありません。

おそらく、接種時期を誤って接種された犬が神経型ジステンパーに罹患してし
まい、癲癇様発作をおこしているのではないでしょうか?
何日か前にも意見交換の方でも書きましたが、ワクチンを接種しているにも関
わらず免疫が成立していない犬は、私達の予想よりも多く存在しているようで
す。
実際に、現在流通しているワクチンのウイルス株とかなり変異した野外株が存
在しているのではないかとの調査研究が実施されている経緯もございます。

#変異があまりに著しいものであれば、現在流通しているワクチンでは、感染
 が防止できないからです。これは何も海外の話ではなく、国内の話です。

また、ワクチンブレイクが生じていなくても、胎児の時期にウイルスに感染し
た動物は、ごく軽い感染であれば、死滅することなく分娩され、その後も生存
します。このような子も癲癇様発作を起こすようになります。
野外においては、実際のところ、こちらの可能性がかなり高いといえます。こ
のような症例はMRI検査において、炎症像として確認することができます。
そして、大切な事は、母犬が充分な免疫力を有していれば、そのような事態は
発生しなかったであろうということです。


>ワクチンはうたなくても、免疫力のアップによって予防は可能です。

免疫力というのは、体内に侵入した異種蛋白に対して発動しますので、ウイル
スや細菌が体内に侵入して、そのことを免疫を担うマクロファージやリンパ球
が認識しないと「免疫の成立」は起こりません。
ワクチンを接種しないとすれば、自然感染が必要です。その場合も、相手が強
い病原体であれば、発病してしまいますから、ごく弱い病原体でないとなりま
せん。それは相手まかせであり、飼い主側がコントロールできることではない
のです。
Irucaさんが言いたかったのは、「免疫」ではなく、「体力」のことでは
ないでしょうか?


>なぜか、接種後のリスクはうたいませんね。

すべてのメーカーのワクチンには、接種時の注意点と禁忌あるいは、副作用に
かかわる事項は使用説明書に記載されております。それがなければ、販売の認
可はおりません。
で、実際問題としてはワクチン接種を実施する臨床獣医師は、確かにこれらの
事項の説明はあまりしていないと思います。私も開業当初は丁寧に説明してお
りましたが、今はごく簡単にしかしておりません。
10〜15分は説明に時間がかかるのと、実際問題として、説明書に記載して
あることに出会う機会があまりにないからです。他の先生方もおそらく同じよ
うな理由なのではないでしょうか。

>てんかんの人、犬の苦しみを考えれば、食事、自然療法での免疫力のアップ
 の重要性をもっと訴えていただきたいものです。

癲癇については、神経病の勉強に熱心な獣医師のセミナーを受けましたが、人
間の癲癇患者が最も苦しんでいるのは、この疾病に対する偏見だそうです。「
太郎君の会」というのは、この疾病が特別なものではなく、この疾病を有して
いる者も普通の人間として社会が受け入れてくれるように正しい知識の普及を
めざしているのだそうです。
癲癇の発作といのも、単純に言えばショートサーキットに過ぎません。知力も
精神も異常な人間でなく、ごく普通な隣人である事を認識していただきたいと
思います。犬の場合は、そこまでの意志の確認ができませんので、癲癇様発作
という扱いになっています。
癲癇は疾病の1つに過ぎず、ことさら特別な疾病と考えるのには、私は賛成で
きません。

食事や自然療法云々は省略しますが、犬の場合、脳炎の後遺症としての癲癇発
作であれば、「免疫力のアップ」は逆効果です。
免疫を担う細胞が自分自身の神経細胞を攻撃してしまうからです。ウイルスに
感染する前に免疫力をあげおいてこそ、効果が望めるのであって、実際に発作
を起こしてしまうようになっていれば、その時こそ、ワクチンの接種について
どのように接種するかを検討しなくてはなりません。

>てんかんになっても、薬漬けになり、またガンなどの病気を生んでしまいま
 すから・・・

この部分も少し納得できかねます。
発作が発生しなければ、日常生活は普通におくれるのですから、やはり発作を
抑制する薬剤の服用は必要かと思います。
本当の問題は、犬の場合、多くの症例が脳炎由来であるため進行性であって、
薬用量の増加を必要とする点でしょう。発作を抑制する薬を控えれば、発作の
頻度は高くなり、それだけ重篤となります。これは臨床医とすれば、放置して
おける問題ではありません。
癌が発生するかのような表現になっていますが、そのような関連性があるので
すか?  実際に抗癲癇薬を服用されている人達はどのように受け取ると御考
えでの発言でしょうか?

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