獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200310-201

いろいろとお国柄もありますので
投稿日 2003年10月22日(水)08時02分 Big1

インフルエンザの話はリスクバランスを無視してしまうことのばからしさの一例と
してあげました。インフルエンザの感染状況と犬の伝染病とは直接リンクしません。

ワクチンの副作用報告で死亡例が出ていることは知っていても、私自身は、20年
臨床に関わっていますが、かるい接種後反応ならみたことはあっても、混合ワクチ
ンを接種したことにより死亡したり、脳脊髄炎になった犬を診たことがありません。
私の知り合いからも聞いたことはありません。逆に、ワクチンで予防できるはずの
伝染病で苦しんだり、死亡した犬は山ほど診てきました。

体力をつけることとワクチン接種は、伝染病予防に関しては車の両輪のようなもの
です。どちらか一方だけが重要なものではなく、どちらも大事です。

猫の話は、先進国アメリカにおいてすら接種間隔の議論が、いかに心許ないもので
あるかを示すためにあげました。事実、アメリカのなかでも3年間隔ということに
対する異論はあるのです。それなのにAAHAがあのようなガイドラインを発表す
るのは、乱発される訴訟対策です。まさに「みんなで渡れば怖くない」のためです。

こういった掲示板でなら、たとえば「ワチクンやフィラリア予防は危険だからしな
いほうがいい。霊験あらたかな護符を犬につけておけば大丈夫」と発言し、それを
真に受けたものがいて、伝染病になってしまったとしても、発言者が訴えられる可
能性は低いですが、動物病院において獣医師が同様のことをしたら大変です。訴訟
される可能性が高いでしょう。

ワクチン接種間隔も同様です。治療とちがい、予防関係は反応をみながら修正する
ということができません。

ワクチンの効果が100%にならないのは、主にワクチンよりも接種された犬側に
問題があります。ほとんどの犬にとっては正しいはずの間隔で接種していたとして
もワクチンブレークを起こす犬は出てしまいます。そのとき、接種間隔についての
獣医師の判断にミスはなかったと証明するためには、能書に従うしかありません。
能書きの記載事項は、メーカーの試験結果に基づき、国が認可したものだからです。
「アメリカのガイドライン」はアメリカの状況によるものであって、土壌のちがう
日本でも摘要できるという証拠はないのです。

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