「ポスト構造主義の時代」ですから、次がみつからなくってみんな困ってるんですから。

　蛮勇を振るってミコトでいうと、レヴィ＝ストロースは、
１　各個人・文化が当然なものとする常識や正義や価値にはまともな根拠がない
２　従って（マルクス〜サルトルの述べたような）文化間での優劣の比較は成り立たない
３　ヒトの文化には、おそらく全ての文化に共通する、親子／婚姻／兄弟姉妹関係、贈与−反対給付、といったような、「構造」がまずあるのだ（それぞれの価値観はそこにはめ込まれるだけ）

　といったようなことをいいました。
　常識ったって人それぞれだものねえ、という身近な実感もこの片に端を発しています。実は割と最近の話です。先の世界大戦時、へたするとベトナムごろまでこの発想はなかった、ので、アメリカはベトナム人やベトナムにいったアメリカ兵を慮ることはなく、日本でも公共放送の某アナウンサーがサイゴン陥落をサイゴン解放とはしゃいだ、んてふうだった由。大東亜共栄圏なんてアイディアも、表象としてはかなり近いものが現実になっているのに当時受け入れにくかったのはこの欠如によりましょう。日帝３６年が、実際に起きたこと以上に恨まれているのも。
　現在では、たとえば先年アメリカが、戦争に反対した議員がひとりだけだったとか、そこへ脅迫が多かったとか、少しおかしくなりましたが、割りと早く、ブッシュ再選危ういかもというところまで戻して来た、なんてのにも影響していましょう。
　
　いまの私たちにとっては、生物学的に生得的な性質は文化に優先する、ってのは当たり前に思えますが、古典動物行動学＋構造主義でできた進化学なり社会生物学なりの影響を受けちゃったからそう思えるわけで、それがなかったころのことはなかなか実感しづらくあります。

　日高敏隆の「アニマル・ロジック」、水原洋城の「サルにはサルの了簡がある」なんかも、確かめてはいませんがたぶん構造主義をヒトの文化のみならず他の生物にまで敷延した成果で、イヌのしつけで、ヒトがこうさせたいと思ってこう働きかけても、イヌはこう受け取っちゃいますよ、みたいな理解・説明のしかたも、構造主義の流れの上にありそうです。
　ワープロのような単機能コンピュータが廃れてパソのような汎用機にとってかわられた、とかも。


　動物が身近にいれば構造主義的発想って判りやすいものだと思うのですけどね・・・。