獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200401-237

トムリンさんへ
投稿日 2004年1月24日(土)19時59分 パールちゃん

ついにやっちゃいましたね、大乱闘。
でもこれはたくさん飼っていれば当たり前のことですし、
犬たちがそれぞれ関係に折り合いをつけるために必要なことです。
多頭飼いをするうえでは避けて通れないことです。
多頭飼いをしているお宅のなかには喧嘩などせずうまく暮らしている犬たちもいます。
が、それは表面的に喧嘩にならないだけで、心理的な葛藤を経てそうなったのだといえます。

さて、リクくんが新しいおうちに慣れ、気安く振る舞うようになったことがアトムくんは許せなかったのでしょうね。
噛まれている間リクくんが高い声で鳴いていたのは「降参です、やめてください」の合図なのに、
それでもアトムくんがやめなかったのはアトムくんに問題ありですね。
アトムくんがやめなければリクくんは反撃するしかありませんから、
ますます興奮してトムリンさんの手首を間違えて噛んでしまったのでしょう。
大怪我にならなくてよかったですね。

再び大喧嘩をすると思います。
どちらかがこてんぱんにやられて明解な上下関係ができないかぎり喧嘩は続くと思います。
できるだけ喧嘩をしないようにするには争いごとの種を作らないよう気をつけることです。
取り合いになるようなおやつやおもちゃは放置しない、
ヤキモチに火をつけるような、トムリンさん争奪ごっこみたいになる遊びはしない、などなど。
くすぶっていても風が吹かなければ燃え上がる可能性は低くなります。
ただ、火種はあるんだと、いつも注意してくださいね。

うちも昨日、大乱闘がありました。
小乱闘(ウーウー小競り合い)は毎日、中乱闘(流血なし)は2〜3ヶ月に1回、
大乱闘(流血あり)は半年に1回くらいです。

大乱闘のときは自分が怪我をしないことに注意しつつ2匹を引き離します。
どちらかを瞬間的に肩の上にかつぎあげることが多いです。
そのとき、もがいて肩の上から落ちて二次災害にならないよう気をつけ、がっしりと抱え上げます。
かつぎあげた子のしっぽが垂れ下がっていると下から食いちぎられるのでしっぽも抱え込みます。
抱え上げられると「私はこの人に守られた、応援された」と勘違いして勢いがつきますます闘おうとしますので、
かつぎあげた子はすぐに別室に運んで降ろします。
勝負に対してどちらもが対等だったときは、私はあえてどちらをも叱りません。
が、喧嘩は好まないということをわからせるため、しばらくの間は2匹ともを無視します。
相手が「ごめんなさい」を言っているのにそれでもやめなかった喧嘩のときは、
私はそれが第一位の犬でも思い切り叱ります。
マズルを力いっぱい握って目をにらみつけながら、
「参りましたって言ってたでしょ? なぜやめない? 間違ってるよ!」と怒鳴りつけます。
そのあと、めいっぱいきつい声で「おすわり!」「お手!」をさせてから解放します。
別室に分けた犬にも「おすわり!」「お手!」をさせます。
「おすわり!」「お手!」をさせるのは、私がすべてを取り仕切っていることをわからせるためです。
そして、私は喧嘩を好まないということを示すために、
厳しい声で「おすわり!」「お手!」をさせて感情を伝えます。
これが済んだらドアを開けて別室の犬を再びいっしょにします。
喧嘩の余韻があるので2匹は近寄って匂いを嗅ぎあったり低くウーと言い合ったりしますが、
そのときすかさず「こらっ!いいかげんにしろっ!」と怒鳴ればそれ以上しつこく争うことはありません。

あとあと平和になるためには決着をつけさせるのがいちばんいいんですけどね。
でもそれは負けるほうが致命的な怪我をするということになりますし、
そうやって負けた犬は犬自身が今後心安らかにいっしょに暮らすことは無理だと思うんです。
負け犬は群れにはいられないのが宿命ですから。

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