獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200403-141

馬なり4ハロンさんへ
投稿日 2004年3月31日(水)16時36分 投稿者 パールちゃん

> 何をどの程度噛めば「甘噛み」ではなくて「本気噛み」とみなして犬に注意するのでしょうか?

程度の問題ではなく、そのとき犬の感情がどうあるかが甘噛みか本気噛みかの境目だと思います。
ふざけて噛んだときはたとえひどい傷になっても甘噛みととらえるべきものですし、
怒りに基づく敵意をもって噛んだときはたとえかすり傷でも本気噛みだと思います。

過去ずっと私は「仔犬にはどんどん人を噛ませたほうがいい」と続けて書いてきましたが、
それはけして「オトナになったら噛まなくなるから」というあいまいな根拠によるものではありません。
馬なり4ハロンさんの危惧することは私も同じく危惧することです。
知識不足や認識不足のために不幸な犬を出したくないというのは共通の思いです。
気に入らないことがあったとき、すぐキレて逆上するような犬になってもらってはもちろん困ります。
だからこそ、キレない犬にするためには仔犬期にどんどん人を噛ませたいのです。
自分の歯の力を認識させ、それが人にどういう影響を与えるかをわからせ、
怒りの感情を上手に表して本気で人を噛むような事態に発展させず場を治める知恵を学ばせたいのです。
これは、仔犬が母犬や兄弟姉妹とのくんずほぐれつ≠フ時期に学ぶことをそのまま応用したものです。
動物行動学上の社会化期を犬⇔犬の関係から犬⇔人にスライドさせただけのことですから、
犬にとってもごく自然に学習機会として受け入れられますし、
人にとっても犬とくんずほぐれつ@Vびながら学ばせることができます。
噛まない犬にするという目的は馬なり4ハロンさんと同じですが、
甘噛みをさせないよりは甘噛みをさせつつ学ばせるほうを私は薦めたいのです。

甘噛みはいけないと教えるのもひとつの方法だと思います。
が、それは甘噛みをさせつつ学習の機会を与えるより、しつけとしては高度なテクニックを要すると思います。
コミュニケーション手段として噛んでくる犬に「いけない」と教えるのは、
訓練の心得をもった人なら犬から人への好意を損なわずにうまくやれるでしょうが、
一般家庭で、まして初めて犬を飼うという場合などは「おまえなんか嫌い」という態度になりかねないのでは?
それともうひとつ、歯をぜったいに使うなと教えると、犬は怒りをどう表現したらいいのでしょう。
気に入らないときにはまずウーと警告を発する、
それでも相手がやめなければ歯を見せる、
それでも相手がやめなければ牙を立てずに歯を押し当てる、
最終的には牙を立てる、
これら一連の段階的な怒り表現は甘噛みによる噛みつきごっこを通して学ぶことが多いわけですから、
甘噛みを経験させないのは怒り表現の段階を踏まないことになり、すぐキレる℃桝ヤを招いてしまわないでしょうか。
犬にも我慢の限界という場面があると思います。
身を守るため本能的に牙を使わざるをえないこともあるでしょう。
そういうときの加減≠フためにも、甘噛みの記憶、
ここまではいいけどそれ以上はダメという記憶が大切なのではないかと私は思うのです。
服の上から軽く噛んだ、飛びついて転倒させたという問題は甘噛みを許すか許さないかとは別のことだと思います。
それは、犬がというより、そうさせないよう人が心がけることだと思います。

甘噛み(ふざけて噛む)を許すか許さないかはしつけの方法論、
しいていえばしつけの技術論だと私は思います。
馬なり4ハロンさんの甘噛み反対をけして否定はしません。
でも、それはよほどうまくやらないと犬との関係を作りにくいですし、
犬が怒りの代用として歯以外の何をもって表現したらいいのかという点でむずかしいことだと思うのですよ。
いかがでしょうか。

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