獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200403-89

Re:若年性白内障
投稿日 2004年3月18日(木)02時24分 投稿者 パールちゃん

としこさんへ。
先天的な若年性白内障の若犬の場合、初期には2つの選択肢があると思います。
ひとつは、進行を抑える薬を続けながらしばらく様子を見る選択です。
白内障初期の1歳前後の犬は、白濁が消えて自然に回復することもあるために様子を見るわけです。
もうひとつは、白内障治療手術をすぐにしたほうがいいのかどうかを知るための検査を受ける選択です。
水晶体の混濁の状態を見たり、角膜や虹彩や網膜の検査をします。
それらに先天的な異常があれば手術をしても視力の回復や維持は見込めませんので、
白内障治療を目的とした手術は断念することになります。
この場合は薬で進行を抑えつつ、視力維持のため眼内レンズを入れる手術のタイミングを計ります。

7〜8歳になれば多くの犬は自然と白内障気味になってきます。
なので、若年性白内障の犬でも眼内レンズを入れる手術を7〜8歳になるまで遅らせることができれば、生活は普通の犬とまったく同じです。
つまり、いかに進行を遅らせるかが鍵です。

白内障を治療する手術と眼内レンズを入れる手術は目的が違うので分けて考える必要があると思います。
白内障を治療する手術は、薬で進行を抑えられない場合と、
そのままにしておくと虹彩や角膜にも悪い影響がある場合と、
進行が早い場合、今のうちに手術をすれば失われつつある視力を維持できるとされたときに行われます。
ただし、手術が成功しても、後年になって再発や、老年性白内障が通常より早く発現することがあります。
手術の成否についてはなんてもいえません。
手術の難易度は個々の状態によって違いますから。
再発についてもなんともいえません。
白内障は加齢によっても自然に発するものですから、再発と老年性白内障との境界はあいまいです。

視力を失うということは、人が思うほど犬にとって困ることではありません。
もともと犬は視力よりも嗅覚や聴覚に頼って生活をしています。
家具の配置などを覚えていれば完全に失明しても部屋のなかで物にぶつからずすいすい歩きます。
心配しなくても大丈夫ですよ。

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