獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200508-112

Re:フィラリア・・
投稿日 2005年8月23日(火)03時38分 投稿者 パールちゃん

さつのさんへ。
フィラリア予防薬投与前の血液検査は、前年の予防がきちんとできていたかを検査するものです。血液中にミクロフィラリアはいない=前年の予防は確実に行えた・・・6月の血液検査の結果はそれを確認したにすぎません。

[1]フィラリアに感染しているよその犬の血を蚊が吸って蚊の体内にミクロフィラリア(第一期幼虫=L1)が入る。
[2]蚊の体内でL1幼虫は脱皮を繰り返してL2子虫〜L3子虫に成長して別の犬への感染ができる状態になる。
[3]その蚊が犬を刺すとL3子虫が犬の皮膚に入り、犬の皮膚や筋肉のなかで脱皮し1〜2週間かけてL4子虫になる。
[4]L4子虫は犬の皮膚や筋肉のなかでもう一度脱皮して3ヶ月ほどかけてL5子虫になる。
[5]L5子虫になったあと皮膚や筋肉から出て血管に入り、血液の流れに乗って犬の血管内を循環する。
[6]L5子虫になってから5〜7ヶ月後、血管内を循環するのをやめて犬の肺動脈に落ち着く。そこで交尾可能な成虫フィラリアになり、オスとメスがそろえば交尾してミクロフィラリア=L1幼虫を産む。
以降、[1]から[6]の繰り返し、これがフィラリアのライフサイクルです。
※蚊に吸ってもらえないL1幼虫はそのままの形で約2年ほど犬の血管内で生き続けます。

さつのさんのわんちゃんたち、今年の蚊の出現に対しては予防ができていないのでフィラリア感染の可能性があります。じゃ、すぐにでも予防薬を投与すれば大丈夫かというと問題があります。もし、すでに犬の体内でフィラリアがL5子虫になっている場合、通常のフィラリア予防薬では駆虫することができません。通常のフィラリア予防薬L3子虫とL4子虫を駆虫する効果はありますがL5子虫には効きません。もし万が一にL5子虫になっているとすると特別に配慮した薬を投与する必要があります。その薬もごく若いうちのL5子虫にしか効きません。

ややこしいですよね、フィラリアって。まとめますね。
・6月の血液検査は前年の予防効果を確認するものだった。
・もし今年になって蚊に刺されてフィラリアに感染したとしても、
 L3子虫やL4子虫が皮膚や筋肉内にいるときは血液中に検出されないので、
 今(8月下旬)血液検査しても感染しているかどうかわからない。
・今(8月下旬)血液検査してL5子虫が見つかった場合、それを駆虫するには特別な薬が必要。
 でも、L5子虫がある程度成長したあとだとその薬も効かない。
ということになります。
結論としては、L5子虫がいるかもしれないことを前提に血液検査は再度受けるほうがいいと思います。
「お薬は1ヶ月分ずつもらいます」と言ってかまいません。「それは困る」というようなら、そこは良心的な病院ではありません。

7〜11月の間の予防薬投与を基本としているということはよほど北国なのでしょうか? 個人的意見としては北国といえども暖房が普及している昨今は確実な予防をめざすなら5〜12月の投薬が推奨されるべきだと思うので、7〜11月の投薬でいいというのには疑問が残ります。

◆獣医師広報板サポーター◆
獣医師広報板は多くのサポーターによって支えられています。
以下のバナーはサポーターの皆さんのもので、口数に応じてランダムに表示されています。

サポーター:新日本カレンダー株式会社ペピイ事業部様のリンクバナー

サポーター:ペットコミュニケーションズ株式会社様のリンクバナー

サポーター:ペット用品通販Gズ\ィエ.COM有のリンクグオー

あなたも獣医師広報板のサポーターになりませんか。
詳しくはサポーター募集をご覧ください。

◆獣医師広報板メニュー
獣医師広報板は、町の犬猫病院の獣医師(主宰者)が「獣医師に広報する」「獣医師が広報する」
ことを主たる目的として1997年に開設したウェブサイトです。(履歴)
サポーター広告主の方々から資金応援を受け(決算報告)、趣旨に賛同する人たちがボランティア
スタッフとなって運営に参加し(スタッフ名簿)、動物に関わる皆さんに利用され(ページビュー統計)
多くの人々に支えられています。

獣医師広報板へのリンクサポーター募集ボランティアスタッフ募集プライバシーポリシー

獣医師広報板の最新更新情報をTwitterでお知らせしております。

Copyright(C) 1997-2024 獣医師広報板(R) ALL Rights Reserved
許可なく転載を禁じます。
「獣医師広報板」は商標登録(4476083号)されています。