えむさんへ。
興奮したっていいじゃないですか、ウゥ〜と唸ったっていいじゃないですか、噛もうとしたっていいじゃないですか。犬だってはしゃぎたいときはあるし(まして遊び盛りの生後95日ならなおさら)、いやなことされたら「やだよ〜」って抗議したいし、やだよ〜と言っているのにやめてくれなかったら「やだってば」の意味で噛んで抗議したくなります。
気に入らないことがあれば唸りながら吠えながら暴走し、噛もうとし、オモチャに八つ当たりする・・これは問題行動なんかではなく、感情があって意思があって生きていることを楽しもうとしている犬のごくごく普通の姿です。ぜんぜん問題視する必要はないですし、悩む必要もないですよ。

しつけとは人の言うことをなんでもきく犬に仕立てることではなく、その子が安全で幸せな生活をするための必要最低限のルールを教えることです。「イケナイ！」を発するのはその子の命や健康をおびやかすような場面くらいなもので、たとえば電気コードをかじったとか焼き鳥の串をくわえようとしたとか、そんなことしたら死んじゃうんだよのごく限られた場面でしか「イケナイ！」を発する必要はないと思うんです。そもそも、噛みそうな電気コードは隠しておく、焼き鳥の串なんか放置しない、そういうことは飼い主が当然気をつけるべきことですけどね。「イケナイ！」を言うってことはイケナイコトが環境内にあるってことですから、犬がイケナイんじゃなくて人間がイケナイんですよ。

「イケナイ！」「イケナイ！」ばかり言われていると犬は不安になります。不安を心のなかにもっているとなにがよくてなにがいけないのかを自分で考えたり判断したりせず、常に人の顔色をうかがいながら暮らす犬になってしまいます。それは犬にとっても人にとっても楽しい暮らしとはいえませんよね。
権勢症候群になんてめったなことではなりません。そんなこと心配しなくていいです。「しつけしなきゃ」で犬を精神的に追いつめるとかえってアルファ化を助長してしまいます。「イケナイ！」ばかり言う人は犬から見たら信頼できる人じゃなくてただの怒りんぼです。

えむさん、犬を「完璧ないい子」に育てようとしすぎです。なにをしたっていいんです、身の危険のないことなら。極端に言えばオスワリなんかできなくてもいいしフセもオテもできなくてもいい。コイとマテ、このふたつさえできれば犬の命を守ることができます。
どうかのびのび育ててあげてください。