獣医師広報板ニュース

イヌ掲示板過去発言No.1100-200508-141

難しいんですけどね・・・
投稿日 2005年8月27日(土)01時13分 投稿者 はたの

>一飼い主さん
 たとえば、アルファローリングですが、飼い主が「アルファ化打破/予防!」としてやるのと、かわいいからコロコロするとは違うわけです。前者はじつはあかんのです。後者のが確率的にみるといいんです。
 躾けよう、訓練しようという意識それ自体が、一飼い主さんのお考えがどうあれ、均してみれば弊害のほうが多いのですよ。そういう行動を飼い主がとり続ける、というのは、叱らなくても萎縮させるんです。
 もっと露骨に言います。
 ヒトの目の高さは地上150センチ前後以上です。
 それだけで、普通の子犬にしてみりゃ「超アルファ」です。
 通常の場合、飼い主が気遣うべきは「過度のアルファ信号発進をしないこと」なんです。

>これが私の考えなので
>でもはたのさまの考えを否定するわけではありません。

 キツイ言い方になりますが、意見の相違ではないんです。議論の水準の差です。
 弊害は(一飼い主さんのお考えかどうあろうとも)「ある」のです。
 この掲示板で許されるかどうかはわかりませんが、議論されるつもりでしたら応じる用意はあります。こういう言い方はずるいなあと自分でも思いますけれど、私はプロパー連中に彼ら彼女らの不足を言い立ててハッパをかけていますので、国内に限らず、最新レベルの議論に応じますぜ。個人的には非常に楽しみでです。
 

>海が好きさん

>要は、快刺激と不快刺激を組み合わせて学習させるということですよね?
 そこが違います。
 強化/弱化/消去のハナシではありません。
 「強化(/弱化/消去)したい行動を起こさせるにはどうするか?」です。
 行動分析学的理論は「ある行動が起きた後」どうするか、には答えます。しかし、その行動を起こさせるためにどうすればいいか、には答えません。そういう枠組みの学問なのです。
 しかしある行動を強化/弱化/消去するためにはそれが生じなければなりません。純研究目的であり、閉鎖環境であるならばそれが生じるまで待てばすみますが、実社会においては間に合いません。ある行動を起こさせるための手練手管はまた別にあるわけです。
 その手練手管を使って必要な行動を生じせしめ、そいつを強化/弱化/消去しましょうぜ、てなことです。
 
 これは全体の流れに対してであり、同時に、海が好きさんに対して、であります。
 原理の解説は書こうかと考えなくもありませんでしたが、掲示板にふさわしい長さにはなかなか収まりませんのでね。
 たとえば、「攻撃性」。
 成書では羅列的な分類はありますが(ン百ン十種類に分けた、つーのが笑い話になってりしますね)、「イヌにとっての(主観的)意味」を見て構造的に分類したものはありませんね。短くはかけないのですよ。
 けれど原理に注目すれば整理できますし、整理できりゃ文脈上における意味の解釈もそう難しくはないんです。
 けれど、いろいろな制限があるのでしょうね、
>「どうすればイイコトが起こるか犬に学習させて望ましい行動を強化する」 
 学派の連中にしても(彼らだけが、というつもりもありませんが)見ている範囲が狭いのです。
 その学閥に殉ずるならご自由にどうぞ。
 
 偉そぶってると言われるの覚悟で書きましょう。私の関心は、「海が好きさんが師と仰ぐ人が是とするの理論的の根拠に対する懐疑」(だけではありません。反対側も含みます)にあるのです。
 業界内で同様の疑問をぶつけた時、実は多くの人が、非公式には現在流通している理論や枠組みに懐疑的なのです。しかしだからといってそう簡単に新しい枠組みを提唱する論文を書けるかというとそれも難しいのですよ。ということを紹介したいな、と。
 
 ちょっと前にパールちゃんが、実は上位のイヌのほうがストレス感じているんでないか、と書かれていました。
 私は同意します。多くのプロパーも同意すると思います。しかしそいつをプロパーが表立って言明しうるか、というのはまた別の話です。単にコルチゾン濃度ですむわけではないですし・・・

 群れの構造とか順位についても、いろいろあるんです。
 トレーニング理論屋さんとか、そのバックボーンとなるビヘイビアリストとか、実は、ちょいと離れた分野では常識化している社会構造についての知見についてはまるっきり無知だったりすることもあるのです。
 そのへんが透けて見えるように勉強ましょうよ、そうすると、うまくアレンジして使いこなせますよ、ということです。

 「コイ」を教える時、どうしますか? 
 来たら強化、来なきゃ消去、はよろしい。
 強化する機会が生じる確率を高めるためには、手練手管を使いますよね。
 中には、それ以前に強化した履歴があることもあるでしょう。でも、強化履歴がないとしても、しゃがむとか、目を合わせたりそらしたりとか、他のイヌやヒトといちゃついて見せるとか、遠ざかってみせるとか、強化履歴がなくたって奏功する手練手管もありますね。
 強化履歴がなくてもそういうのは効きますが、なぜでしょうか? ということなのでよ。

 動物の社会構造やその認知については、京大系のサル学があるので、日本語の(かつ、専門の学会誌の論文でなく一般書で)相当に高度な議論を読むことができます。「サル学の現在」と「サル学漫才」をお勧めしておきます。このあたり、ネタ元の論文は欧文になっているはずなんですが、欧米のイヌのプロパーが実は不勉強なことが透けて見えたりもします。

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