イヌ掲示板過去発言No.1100-200602-204
きゃべつさん、けりーずはうすさん |
投稿日 2006年2月25日(土)21時53分 投稿者 はたの
>けりーずはうすさんのみ宛。 けりーずはうすさんは獣医師でらっしゃいますよね? 獣医師は獣医学の専門家ですね。「専門的・体系的な教育を受けた成果」として専門家になられたわけで、「自称専門家」ではなく、既存の権威に認定された専門家なわけです。 だからこそ、獣医師の、「獣医療に関する」発言には重みがあるわけですし、だから、主治医に干渉しないように等の注意を払っていらっしゃいますよね? 他方、けりーずはうすさんは、イヌのしつけや訓練の専門家でありませんよね? 少なくとも、イヌの訓練やしつけに関して「体系的・専門的な教育を受け」「既存の権威に認定された」専門家ではないはずです。 なぜって、獣医学と違って、イヌの訓練やしつけに関しては、「体系的・専門的な教育」課程や、既存の権威など世界中に存在しないのですから。現在のイヌの訓練やしつけの専門家は、全員が、いわば「自称」専門家なわけです(実際の見識や力がどうかとは別に)。多少の年齢差はあれ、専門家としての第一世代、ファウンダー世代ですから、当然のことですが。 【このあたり、先の、野生動物獣医師の認定試験の経緯など想起されれば、ご理解いただけると思います。仮の認定委員をおいて試験し、合格者が専門医として認定され、かつ最初の本式の認定委員となる。《仮の認定委員》をつとめた人たちも、専門医として認定されるためには、《本式の認定委員》が行う試験に受からなくてはならない、という方法で、全員が《他者から認定された》カタチにしようとしているわけです】 けりーすばうすさんは、獣医師としては《他者から認定された専門家》ですが、イヌの訓練やしつけに関してはそうではない。獣医師兼愛犬家であられる。 にも関わらず、獣医師が発する「動物に関する意見」は、すべてが、《他者から認定された専門家としての、専門的意見である》と受け取られがちなのです。 誤解が生じやすくなります。 ですから、 ・(自称であってもかまいませんが)専門家としてふさわしいぐらいの意見を述べる ・獣医師として専門的な意見を述べる際に払う、誤解を避けるための注意と同等の注意を払う ・「獣医師でもあるけれど、この意見は愛犬家としてのものである」と明示する ・「臨床医としての自分の見聞の範囲では〜」と明示する などのご注意を払っていただけれるなら、ご意見がよりよく活かされるのではないだろうか、ということです。 首輪の件、もしも獣医療についての質問でも同じように答えられましたか? おそらく、違うのではありませんか? 「検査してみないと断言はできないが・・・」「Aがこうならこの可能性がつよく、その場合は対処aが望ましいが、Bの数値がコレコレならbが望ましい可能性がつよく」云々、といったより慎重な対応をされたのではないでしょうか? 患畜・畜主の求める優先順位によって対処が変わる、ということにもっとビビッドに反応されたのではないか、ということです。 首輪が抜けて標識ナシでうろついて・・・というリスクは、「首輪が抜けずにヤブの中で死ぬ」場合以外にのみ存在するものですね。 けりーずはうすさんのところのスタッフが噛まれたという一例を根拠に、その一例さえきちんと解析しないで・・・というのは論が乱暴にすぎましょう。 そして、「止めることができる」というのは、まさしく、関係性の改善に他なりません。 マウンティング行動のみに着目するのであれば、関係性と無関係な方法で消去を試みればいいことですから。 「蹴る」のがベストの方法だと私も思いませんけれど、マウンティング行動の弱化と関係性の改善に同時に効く一案であることは確かです。 「蹴る」ことの倫理的意義をヒトのロジックで判断して何になりましょうか? いろいろと混乱しておられるように思います。 別に、既存の枠組みにとらわれる必要もありませんが、既存の枠組み以外は簡単に紹介するわけにもいきませんので簡単に羅列しますが、ユクスキュルの環世界、ギブソンのアフォーダンス(と【情報はインターモダルである】こと)、ローレンツのドライブ・リリーサー、ティンバーゲンの4つのなぜ、スキナー、ワトソンらの三項随伴性、S-R理論、エソロジーとそれらを繋ぐものとしてのハルらのS-O-R理論、イヌの「社会勉強」について考えるのであれば刷り込み・社会化・(狭義の)学習の概念(が学者によってまちまちとであること)、人工知能・ロボットにおける【フレーム問題】、という程度は概観されることをお勧めします。続いては、必然的に、クオリア、心脳問題、量子論の不確定性原理とコペンハーゲン解釈(脳は量子的に振る舞うのではないかという仮説もありますしねえ)、古典的計算主義とコネクショニズム、といったあたりにハマりましょうよ、ということになりますが。 >おふたりに。 「関係性改善」は常に、「個々の行動の改善」よりも容易とは限りません。しかし、常により困難であるとも限りませんし、時間がかかると決まっているわけでもありません。極端な場合、数分で済むこともあります。水泳の息継ぎとか、補助輪なしの自転車に乗るとか、といった、「コツ・感覚を掴むまでは苦労するが、一度コツ・感覚がつかめてしまえばなんということもない」事柄に似ています。 そして、関係性の改善はメリットが大きいので、挑戦してみる価値は大いにあります。 マウンティング対策を行う場合、 1 マウンティング行動のみの改善を求め→マウンティング行動のみが改善される ということは、実はありません。 2 マウンティング行動の改善を求め→(過イヌ主が意識しているか否かに関わらず)関係性が改善され→マウンティング行動が減少する になります。 言い換えると、「1」を試みても、成功する時には、必然的に、「関係性の改善」は生じるのです。 従って、 3 マウンティング行動の改善のために→関係性の改善を求め→シンボリックな行動の改善を試み→関係性が改善され→マウンティング行動を「含む」関係性由来の問題行動が減少し、また潜在的な問題行動の芽を摘む というほうがよほど合理的です。 つまり、マウンティング行動を減少させるための「標的行動」は、かならずしもマウンティング行動でなくていいのです。 もっとラクな標的行動がある可能性が高いのです。 >きゃべつさん >マウンティングひとつを取り上げるだけでは根本の解決にはならないと、 >そういう事で良いのでしょうか? >もしもそういうことならば「しつけ休憩」宣言をしている私には、 >今回のマウントをやめさせたいというのも、今のとこ無理、ってとこなのでしょうか。 まさしくそういうことです。 マウント行動に注目し続けても、あまり良いことがあるようには思えません。 むしろ、(術後の回復に合わせて)運動量を増やす、といった絡め手から攻めるほうが、「こじれる心配もなく」「マウンティングのみならず全般的な関係性の改善が見込め」て得策だろうと思います。 運動不耐性の老犬や病気でないかぎり、疲れさせるのは極めて有効です。「疲れ気味のイヌがいいイヌ」という言葉があるほどで、全部ではないせよ、かなり多くの問題行動が、運動量を増やすだけで軽減します。 犬種や年齢、健康状態にもよりますが、一般論として、若くて元気なイヌは、一日数十〜100kmぐらい歩いたり走ったりしても平気です。 以前飼っていたイヌたちが若い頃、虫取りに連れて行ったことがあります。ヒトが10時間、20kmぐらいは歩いたでしょうか。イヌたちは周りをうろついていましたから、その何倍か動いていたはずです。 帰りのクルマの中ではぐたっと寝ていたので、夜の散歩はサボれるかと期待したのですが、2時間ほど車中で寝たら帰り着く頃にはすっかり復活し、いつものように30分ほど歩くハメになりました。 きゃべつさんご自身の脚力とか時間とかいろいろな制限要因はあると思いますが、数週間であっても、「イヌが疲れるまで」引っ張り回してやることができればいいように思います。自動的に「イヌに注目して」過ごす時間も増えますし。
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