イヌ掲示板過去発言No.1100-200602-80
噛む2題 |
投稿日 2006年2月7日(火)20時41分 投稿者 はたの
年の近い雄イヌ同士の闘争への対策としては、 ・完全に分ける ・完全に決着がつくまでやらせる のどちらかが望ましく、 ・飼い主が仲裁する、時々分ける は、争いをいたずらに長引かせるだけであまりよろしくありません。 そして、コマンドで制止するのも困難です。というか、いわゆる訓練性能が高い使役向きの犬種以外では非現実的です。 去勢も、特に未去勢の雄同士となると、「現場感覚的」には勧めたくなりますが、メタアナライシスな統計調査では有効性が実証できていないはずです。 「雄同士の攻撃行動に関しては、去勢手術が効をそうすることがある。Hopkins(1976)の報告によれば、60%によい結果が認められたという。手術を実施する前に、デルマジノン(Tardak Syntex)を投与して手術の効果をあらかじめ調べてみることも大切である」(犬と猫の行動学、p74)という程度にすぎません。 あまりに単純素朴にテストステロンの影響を思えば去勢、ということになるわけですが、脳への不可逆的な影響は去勢によっても取り除けないこと、劣位がハッキリすれば睾丸の萎縮とテストステロン値の低位安定が起こりうること、それらはもしかすると睾丸が残っているほうが顕著かもしれないこと、などど勘案すると、判断は容易ではないでしょう。 寝ているイヌ。 どこのに国の諺だったか、「寝ているイヌは起こすな」のようなのがあります。 寝ているイヌに急に触ったら噛まれるのは当たり前です。 人間だって、急に揺り起こされたら不安を感じて手を振り回すことがあるでしょう。その手が揺り起こした人間の顔に当たることだってあるでしょう。 判断力が低下し、不安感が高くなっている原因が寝ぼけていることにあるか、狂犬病にあるかは異なりますが、「恐怖による」「自動的な」反応という意味では、このふたつはとてもよく似ています。どんなに訓練しても制御不能です。訓練が染みこむ脳の層より深いところから発するものですから。 トレーニングというのは双方向的なものです。イヌを変えるだけでもなく、ヒトが変わるだけでもない。プロが作る使役犬ならともかく、家庭犬であれば、肝心なのはイヌを終生飼養できる程度(問題行動で札処分せずにすむ、閉じこめっぱなしにせずにすむ)の「折り合い」をつけることです。 寝ていたら触らず、触る必要があるのならまず声をかけて起こしてからにする、という折り合いのつけかたも大いにアリです。 >けりーずはうすさん ご自身の体験や実感に由来するご意見と、現在の行動関連の研究の成果の紹介とは区別してくださるほうが良いように思います。 けりーずはすうすさんは獣医師ですよね? 少なくとも、周囲はそのように受け取っていますよね? であると、けりーずはうすさんのご意見のうち行動に関わるものについても、すべてが、「専門家としての獣医師としての見解」のように受け止められかねません。実際の教育プログラムの充実度とかかわりなく、世間的には、行動に関するものであっても、獣医師は専門家と見なされがちなのですから。 イヌの性格形成の時期についてのご意見は1個人としてのものですよね? 私自身も、個人的な感覚としてはなにかありそうな気がどうしても捨てられずにいますけれど、現在の通説である、パピーテスト類の信頼性は思いこみ以上のものではない、という研究結果は(それを覆す仕事が出てくるまでは)尊重すべきと考えます。 去勢の効果についても同様です。成書にかかれている内容が、著者の個人的な感覚に基づくものなのか、客観的な手続きを踏んだ上でのものなのかは峻別すべきでしょう。 そうしたお気遣いをいただけれれば、ご意見はよりよく活用されるのではないかと思います。
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