獣医師広報板ニュース

ネコ掲示板過去発言No.1200-200607-3

re: 猫回虫
投稿日 2006年7月2日(日)11時18分 投稿者 プロキオン

>先生からは「長期の虫下しをした後に再発するのは非常に珍しい」と言われました。すぐに1ヶ月かけての虫下し治療が始まりましたが、「もしかしたら肝臓に虫がいるかも」とおっしゃっていたのと、フィラリアを疑うような発言も聞かれ、とても不安です。

回虫は、寄生虫とすれば、比較的落としやすい寄生虫です。これが、なかなか駆虫でき
ないという場合は、宿主である猫側になんらかの問題が隠れていることがあるのかもし
れません。問題というのは、大抵が免疫が低下しているというようなことです。
こちらの問題がないという場合であれば、例え、外出していなくても、家の中で再感染
がくりかえされているということになりそうです。
駆虫しても、環境内に残存している虫卵を摂取して再感染しているということになると
思います。

また、肝臓に寄生虫がいるのかもいうことですが、回虫は生活環の中で肝臓を経由する
ことは普通のことです。
経口的に摂取された卵は消化管で孵化して、幼虫は粘膜へ侵入して消化管の外へ出ます。
この後、腹腔を経て門脈の血流に乗って、肝臓に至ります。
が、しかし、それでどうというのではなく、肝臓から後大静脈、心臓、そして肺へと進
んでいきます。そしてこの肺で、痰のような形で、咽喉頭まで戻り、再び嚥下されて、
消化管へ戻ってきます。そして、再度消化管に戻ってきて成虫となります。
回虫の発育過程においては、これは普通のことですので、驚くことでもないですし、そ
れが原因で駆虫がうまくいかないということにもならないと考えます。

また、犬においては、肝臓にある種の条虫が寄生する例も問題となっておりますが、猫
における報告は耳にしておりません。
まずもって、こちらの条虫の話ではないのでしょう。

そして、フィラリアについてですが、猫における犬フィラリアの感染では、犬における
症状とは少し異なって、アレルギー性の肺炎のような症状と説明されており、かなり急
性の経過をとります。
慢性的な経過や消耗性の症状という病態とは異なるはずです。

前回も環境から再感染しているのではないかというようなお話をしたように記憶してい
るのですが、まず、当該猫が白血病のような免疫にかかわる疾病に罹患しているか否か
を検査しておくとよいと思います。
こちらが、とりあえず陰性であれば、外的要因に注意を振り向けることができます。
塵や埃の中の虫卵は、何年でも生きていますし、屋外においても近くに感染猫がいれば、
虫卵は猫でも風でも、人間でも、あちこちからやってきます。もし、そのような環境で
あれば、回虫が寄生していようが、いまいが、定期的な駆虫を必要とするということに
なります。
もし、猫自身に再感染を容易に成立させてしまいやすい原因があったのであれば、なお
のこと、環境対策が必要となります。

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