ネコ掲示板過去発言No.1200-200702-43
Re:仔猫のしっぽ |
投稿日 2007年1月26日(金)12時21分 投稿者 プロキオン
猫の鍵型の尾は、「キンク」と呼ばれている遺伝子の悪戯ですね。椎骨の形成不全を発生させる遺伝子です。 尾椎の骨が本来の長さにまで生長せずに三分の一とか二分の一くらい、あるいはもっと小さな骨としてしか形成されない現象です。骨に充分な長さがないので、尾の靭帯や筋肉が体側に引っ張る力に負けて、その尾椎を基点に折れ曲がるということになりますし、また、そのような尾椎が1個とは限らないので、複雑に曲がりくねった尾をもつ猫も出てきます。 日本に猫が入ってきたのは、奈良時代末期から平安時代にかけてと考えられており、その当時の猫は、みな尾が長かったようです。それがいつしかキンクの遺伝子をもつ尾の短い猫(東南アジア系らしいです)が入ってきて、「薩摩猫」「唐猫」と珍重されて急速に広がったと説明されています。この場合の「唐」は「とう」ではなく「唐天竺」を意味する「から」と読みます。猫のたどってきた道と時代背景を考慮すると、「南蛮貿易」か「長崎の出島」や「薩摩貿易」等が関係していたと思われます。 戦後、これらの猫が海外に紹介され「ジャパニーズボブテイルキャット」として認知を受けたために、逆に日本猫の代名詞となった感があります。 鍵型の尾は、長い尾と短い尾の両方が交じり合ったために出来てきた尾と言えそうです。 >しっぽが上に向いてくれる方法はないものでしょうか? 病気ではないので 手術で奇形を治していいものかどうか? 治していただけるのかどうか? について相談させていただきました。 上述してきましたような理由で生じている現象なので、美容整形的には、ないものを足すとか、人工骨におきかえるというような方法が必要となります。これは残念ながら現実的ではありません。多くの例では、曲がっていることで支障があるのであれば、切除するという処置が選択されると予想されます。 また、一般的には尾が曲がっているということで支障が生じることの方が少なく、とくに何か処置を必要とするとはならないようです。この遺伝子は、子孫に伝わりますので、注意するとしたら、むしろ、そちらでしょう。 いわゆる日本猫の中には、この遺伝子のために外観は正常でも腰椎や胸椎が1個欠損しているという個体も、しばしば遭遇することがあります。このような場合ですと、普段は自然に暮らしていても何かしらの折に、問題が生じることもあります。尾だけの問題であれば、このような例よりは実害はありません。 今回のご相談は、sutemaru先生が言われているように、まず下痢軟便を治療することでよいように思います。 鍵型の尾は、どこでどのように曲がっているという個体の特徴を現していますので、体に名前が書いてあるようなものです。迷子の際には、捜す手がかりになってくれます。
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