獣医師広報板ニュース

ネコ掲示板過去発言No.1200-200806-104

ナノさんへ
投稿日 2008年6月29日(日)17時21分 投稿者 プロキオン

IBDというのは、まだ正式の病名とは考えない方がよいのかもしれません。
感染性の腸炎という概念が妥当なのか、はたまた、アレルギーがおきていると考えるべきなのか、私にはまだよくわかりません。

腸炎が発症しているのですが、そこに遊走浸潤している炎症細胞がリンパ球やもしかしてプラズマ細胞というような免疫を担う細胞群であるケース、あるいは白血球の中の好酸球のようなアレルギーや寄生虫の際に遊走する細胞であったり、消化管に免疫反応である肉芽腫の反応がみられたり、という腸炎です。
これが簡単にアレルギーで発症している腸炎と言ってしまうと、別のアレルギーと混同されてしまいかねません。猫には「食餌性アレルギー」というアレルギーが別にあって、全身の激しい痒みをともなうアレルギーです。食べ物に由来するアレルギーと解釈してしまうと両者は混同されてしまいます。しかし、また逆に混同するというよりも、本当に別々のものと解釈していて、それで誤りはないのかとも思います。
下痢をおこすウイルスでもそこにいて、それに対する強い反応がおきているということであれば、理解できるのですが、その場合の病原体というのがまだよくわかりません。

また、さらにややこしい話になりますが、鶏にもIBDという病気が存在しています。これは通称「ガンボロ病」とも呼ばれていますが、免疫器官がやらる病気です。
鶏には、リンパ節がなく、ファブリキウス嚢という器官がリンパ球に免疫能力を付与しています。ここが選択的に感染してやられてしまうので、ワクチンを接種しても効果がえることができず、疾病で大きな被害をうけることとなります。一種の免疫不全ウイルスが存在するということになりますね。
こちらは、ウイルスも病名も確定しておりますので、話はわかりやすいです。

本来であれば、病名というのはブッキングしないようにしなくてはならないので、猫のIBDという呼称はブッキングしてしまっています。臨床分野からの呼称のようですので、そこまで注意が払われていないのかもしれませんね。

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