獣医師広報板ニュース

ネコ掲示板過去発言No.1200-200809-50

Re:FIVワクチンについて
投稿日 2008年7月25日(金)10時52分 投稿者 プロキオン

今回のFIVワクチンについては、なぜか動物病院に事前に説明が無いままに飼い主さんむけに情報が伝達されてしまっているようです。一部には接種料金まで公表されているとの話もあって、飼い主さんから問い合わせがあった際に効能や接種方について答えようがなくて困るうえに料金まですでに指定されてしまっているのかというぼやきの声が聞こえてきています。

さすがに、ここ何日かでリーフレットのようなものが届いている病院もでてきているようですが、それをもとにネット内を情報が駆け巡っているようです。
で、その情報とは下記のようなものなのですが、ネット情報ですので、即、そのまま受け取ることはできません。(○の中の数字は私が意図的に伏せています)

1、ベタルマ株と静岡株の2種類のウイルス株に対して70%の有効率である。
2、接種部位に硬結が生じる比率が○○%以上の猫において見られた。
3、○%の猫に副作用が見られた、この中には全身症状を伴う例もある。
4、初年度の接種は3回必要である。

どうでしょうか? ちょっと朗報とまでのものではないように感じます。だぬどん先生もおっしゃっておられましたが、「ワクチン接種によって抗体を保有している猫と自然感染猫との鑑別ができなくなる」という点、私も気になっております。
簡単に言うと、迷い猫を保護して念のために検査したら陽性と反応が出てしまった。この時に感染猫として対応せざるをえないということですよね。陰性猫であれば、そのまま新たな貰い手を捜すこともできますが、陽性猫ということであれば、かなりむずかしくなり引き受けてが出てこないかもしれず、その猫の人生を左右しかねない事となります。

これを防ぐためには、FIVワクチンを接種する猫は決して迷子にしてはならないということになります。そのためには、完全室内飼育が必要なわけなのですが、完全室内飼育であれば、咬傷等によって感染するこの疾病では、そもそもこのワクチンを接種する必要性はどうなるのかとなってしまいます。この点はだぬどん先生も同じお考えと推察しております。
迷子にしてはならないの もう一つの方法としてマイクロチップがあります。FIVワクチンを接種する猫には必ずマイクロチップを入れておくことを勧めなくてはならないのかなと考えておりますが、飼い主さんがそこまで理解していただけるのだろうかという不安はあります。
おそらく、多くの飼い主さんは、「ああ、良かった。FIVにもワクチンができたんだ。」というくらいの気持ちなのではないでしょうか?
獣医師に情報が伝達されずに 飼い主さん向けの情報が先行したのも、おそらくはメーカー・ディーラー側の販売戦略が飼い主さんに「ああ、良かった」と思ってもらうほうに狙いがあったように思います。つまり、飼い主からの需要を喚起してしまえば、獣医師はそれについてこざるを得ないであろうと言うことですね。いささか穿った見方かもしれませんが…。

>それ以上に積極的に、つまり、たとえば「3種のように仔猫に必ず打ちましょう」みたいな使い方は、現時点では怖くてできないし、また必要もないかな、と考えています。
いずれにせよ、まだまだ情報不足で、なんとも言えない、というのが正直なところです。

だぬどん先生の、この御意見ですが、私も同感です。私も様子見をしたいですし、この疾病では感染から発症にまで長い時間を必要としますので、野外でのワクチンの有効性をもう少し確認してからという気持ちでおります。

私の病院には、リーフレットも案内もいまだに何も届いておりません。

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