通りすがりの一介の開業医です。

「アイボメック」は牛や豚等のカイセンの治療薬なのですが、主成分で
が犬や猫のフィラリアの予防薬とされている成分と同一なので、作用と
しては同じ効果が期待できます。
ただし、対象となる動物が大きく、カイセンやその他の寄生虫について
もフィラリアを相手とするのよりも、薬用量を２桁くらい多く必要とし
ます。
したがって、１mlあたりに含有される主成分の量が濃くなっていまして
フェレットのように１kgくらいの体重の動物を対象とした場合、薬用量
からいくときわめて使用しにくい薬剤です。

効き目がないとか、強すぎるというのは、おそらくこの点に関わっての
ことだと思います。

希釈して薄めないで、そのまま使用すれば薬用量が多すぎますし、希釈
して用いるにしても基材が石油系薬剤なので、水溶させると混濁沈澱を
生じてしまいます。
この薬を犬のフィラリア予防に転用した獣医さんがおりまして、今、述
べたような理由で、薬剤が薬効を失ってしまったものを服用させてしま
い、犬がフィラリアにかかってしまい、裁判ざたになったことがありま
す。これが、残念なことに１ケ所の県のお話ではなく、日本小動物獣医
師会でも、薬剤は正しく使用しようというキャンペーン活動を実施した
こともありました。

フェレットのフィラリア予防が目的であれば、某メーカーの顆粒剤が、
妥当ではないかと思いますし、そちらを勧めている本もあるはずです。
顆粒なので、１kgに満たない体重であっても、必要かつ充分な薬用量に
調整することができます。
錠剤を砕いて何分の一かにするのも、同じ事なのですが、顆粒の方が手
間ひまがかからないと思います。

この「アイボメック」、悪い薬かというと、全然そうではありません。
使用対象と目的が、製造段階から違っているのですから、本来の目的に
対してもっとも使いやすく効果がでるようになっているだけです。

薬って、みんなそういうものなんじゃないかな？　　本来の目的以外に
使おうとすれば、使おうとする者にそれだけの見識と手間ひまが求めら
れるようになるというか。
別に薬は悪くないですよ、使用する人間の側の問題だと思うんだけど。