獣医師広報板ニュース

ウサギ掲示板過去発言No.1500-200401-39

野うさぎは、
投稿日 2004年1月13日(火)17時46分 プロキオン

野ウサギは、家畜化された家ウサギ(穴ウサギ)とは姿形は似ていても、別の
動物です。
本来、草地や地面の窪地へ産み落とされ、毛も生えているし、目も開いて生ま
れてきます。危険がちかづけば、母親がおとりになって相手の注意をひきつけ
て遠方へ誘導します。母親が戻ってくるまで赤ちゃんウサギは石になってじっと
その帰りをまっています。自分自身の脚力で逃げ切れるようになるまでは、そ
のようにして危険をやりすごすようにしています。それが自然が教えてくれた
知恵なのです。

「へその緒」がついていたのであれば、分娩から間もない個体を連れてきてし
まったことになります。おそらく、母親は犬か狐にでも食べられてしまったと
理解しているのではないかな?

野ウサギの子ということになれば、これを慣らすのは大変ですね。命をつなぐ
事自体がかなりの苦労です。動物園においてもなかなか困難なことであって、
常時野ウサギの展示ができる動物園というのもないのではないかな。
野ウサギ自体がとても神経質で、ちょっとしたことで逃げようとして疾走体制
に入りますので、怪我やストレスも並み大抵ではありません。野生下であれば
2〜3キロ四方の縄張りを主張するのではなかったかな。これだけの面積とい
うことになれば、ストレスを与えずに飼育するということが無理なのです。

現在の飼育条件下に「慣らす」ということが、すでに過度のストレス下にある
ことを意味しており、「慣れてきた」というのは、ウサギの苦痛と忍耐による
もの以外のなにものでもありません。
野生動物を飼育するというのは、概ねそのようなことを意味します。ある爬虫
類の研究家が、「亀について外観からは痩せていくのがわかりにくい、ゆっく
りと死んで行くのを『飼育しているとは言わない』」と言いました。

もう結構時間が経過してしまっているようなので、今さらウサギを野生へ返せ
とも申しませんが、ウサギを慣らすのではなく、ウサギの本来の生活に人間の
方が合わせてあげて下さい。
ここの掲示板のみなさんが飼育している家ウサギだって、家畜化されて人間と
いっしょにくらせるようになったのですが、家ウサギだって、ストレスのみで
死んでしまうことはあるのですよ。
できる限り、そうっとしておいて、人間と接触する時間を短くしてあげて下さ
い。
野生動物は個人が所有するものではなく、国民の共有財産とえいます、多少き
つい言葉に聞こえたかもしれませんが、財産の保有権を主張できる者の1人の
意見としてお聞き下さい。

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