獣医師広報板ニュース

ウサギ掲示板過去発言No.1500-200408-103

乗りかかった船なら、ついでに
投稿日 2004年8月30日(月)12時19分 投稿者 プロキオン

>それくらいで駄目になるような縫い方してないわ(^^)」
 っていわれました。確かに傷口を気にしてなめるような事も、
 あまりなかったのですが。縫い方にもコツか何かあるのでしょうか?
 昔猫の時は気にしてなめて苦労した事があるので、今だに不思議に思っ
 ています。

え〜とですね、縫い方のコツとうよりも、手術時の手技のすべてが関係し
ていると思います。
切皮もスーッときれいに切って貰った方が後でズキズキ気になりませんし、
出血も鉗子で何度も止められるよりは、少ない方が組織の挫滅も軽減され
ます。
そして糸は、できる限り軟らかい糸が異物感が少なくなるので、動物も不
快感を感じ無くて済みます。
ただし、この軟らかい糸というのが、たぶん「絹糸」が一番軟らかくて良
さそうなのですが、これも異種蛋白質由来の寄り合わせ糸です。
そこで、糸の材質と太さとの選択の試行錯誤が始まるというわけなのです
よ。
そして、散々、悩んだのにもかかわらず、のんびりとしたウサギさんで、
まったく糸を気にしない個体もいるし、犬でも縫合糸を気にして喰い切っ
てしまう個体もおります。

被捕食動物の場合は、特に血液や体液の臭いがしていると、それだけ周囲
に存在する捕食者に傷付いた餌が近くにいることを知らせてしまうことに
なりますので、余計に身繕いに熱心です。
したがって、できる限り傷が早く癒合するように切皮も小さくスムースに
そして、余計な出血も余計な手術侵襲も極力抑えて、傷口周辺の細胞にダ
メージを与えない、かつ、縫合糸の選択(異物感が少なくて丈夫なもの)
ということになります。縫合の間隔というのも影響あると思いますが。

このように書くと、なんだどの動物にも共通していることではないかと感
じられるかもしれませんね。 まさにそのとおりです。
当然と言えば当然、あたりまえのことの中で悩まされるのがウサギ等の手
術なのです。
一度でも、術部の皮膚を齧られてしまった経験があれば、ウサギの手術に
躊躇いを感じるのは理解できるというものです。

もっとも、糸を喰い切るか否かであれば、ステンレスワイヤーの糸やステ
ープル(ホチキスのようなやつ)で縫合すれば、これは縫合部だけは安全
です。エリザベスカラーも必要ありません。
皮膚ごと、全部齧られてしまえば、これはやっぱり駄目ですけども…。


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