獣医師広報板ニュース

ウサギ掲示板過去発言No.1500-200606-102

エンセファリトゾーン 補足
投稿日 2006年6月19日(月)23時36分 投稿者 チーママ

小脳感染
パスツレラ・Ez共に、小脳感染するそうです。そして症状が軽減しても、
保菌(虫)者<キャリア>になる事もあるそうです。
つまり再発はありえると言う事ですね。
ですから、まったく症状がないからと言って感染していないという事でもない。
と言う事は、健康な時に検査をして「キャリアかどうか調べておく」という事は
健康管理の上で役立つかもしれませんね。
(先生にすれば、その段階で発症予防的に投薬してほしい。)

Ezの生態
感染は主に尿に排出された胞子(スポア)が口に入り、腸壁から体内に侵入し
マクロファージという細胞の中で分裂を始めます。お腹の中で増殖したEzは
胞子の形やマクロファージの中に取り込まれたまま血液に乗って全身に行く事
が出来ます。そして腎臓・肝臓・小脳などEzが好む臓器にたどり着くと、そ
こに病変を作ります。腎臓で増殖したEzは胞子の形で尿中に排出され、それ
により他へ感染していきます。これを水平感染と言います。
このほかに胎児のうちに感染する垂直感染があるとも考えられています。
また体外に出た胞子は、3ヶ月位は感染力があるようです。

血液検査
2005年から、血液検査によりEzの感染によって生ずる坑Ez抗体があるかな
いかで、感染の有無を調べられるようになりました。
ただし、検査は小動物専門の臨床検査企業(国内)への依頼になりますので、
結果が出る迄に多少時間がかかります。(〜3日)
また現在の検査方法では、Ez感染直後では陽性反応(抗体がある)が出ません。
検査で陽性反応が出るのは、感染して3週間から1ヵ月後です。
現在検査方法の開発も進められており、そのうち感染が新しいか古いかも
分かるようになるかもしれません。

発症
感染しても必ず発症するわけではありません。宿主の免疫反応が許してくれる
限りは、大人しく生活しています。これを日和見的と言い、こうした事は他の
細菌やカビなどでも良く見られる事です。鳥さんなど検査をするとこうした菌が
かなり見られる事があります。
その為、感染していても一生発症しないウサギもいるわけです。
それがある時、何らかの引き金で、Ezに対して免疫反応が起こって発症します。
分かりやすく言えば…
 カーテンに小さなシミが付きました。シミは徐々に目立つようになりましたが、
 「ま、これくらいならいいか」ってそのままにしていました。(日和見的段階)
 でもある時、そのカーテン全体の汚れが気になり「そうだ。洗濯しちゃおう」
 と洗い始めました。そうなると小さなシミも気になりだします。
 「漂白剤入れちゃおう!」(免疫反応が起こる)
 漂白剤を入れると元の色柄もダメになっちゃう(病変部への過剰攻撃)のです
 が、そんなのお構いなし。色柄はどんどん薄れていきます(症状の発現)
 出来上がりはダメになったカーテン。(障害が残る)
といった所でしょうか。大分乱暴な表現ですが、大まかに言えばこういう事です。

投薬
これも前出のシミを例にとれば、シミにも水性・油性があるわけで、本来はシミ
の性質により、漂白剤を使い分けなくてはなりません。
一番分かりやすいのが血液のシミでしょうか。
ほとんどのシミは塩素系漂白剤できれいになります。
ところが血液は酸素系漂白剤ならきれいになりますが、塩素系漂白剤を使うと
黄色い変色が残り、そうなると酸素系漂白剤を使ってもなかなか元には戻りません。
これを、シミを症状、血液をEz、酸素系漂白剤をEz治療薬、
塩素系漂白剤を抗生物質、黄色い変色を後遺症(斜頚等)に置き換えると…
 ほとんどの症状は抗生物質で収まります。
 ところがEzはEz治療薬なら収まりますが、抗生物質を使うと後遺症が残り、
 そうなると後からEz治療薬を使っても後遺症はなかなか改善されません。
と言う事になります。一度破壊された脳組織(黄色いシミ)は元には戻らないの
ですね。

前置きが長くなりましたが、つまり細菌性(パスツレラ等)の為の抗生物質を投薬
すると同時に、Ezの為の駆虫薬も投薬し、小脳の神経破壊を抑えるためのステロ
イドも与える。
同時に血液検査をして、検査結果によって抗生物質か駆虫薬のどちらかを中止す
ることになります。
検査結果が出るまでは、ステロイドによりパスツレラ等が活発化していないか、駆
虫薬の副作用である貧血等がでていないか、注意する必要もあります。 
ちなみにEzに有効な駆虫薬であるフェンベンダゾールは4週間単位で投与します。
というあたりが、現在(2006年6月)でのベストではないかと思います。

ステロイド
なぜステロイドを使うのでしょうか。
Ezに反応した抗体は病変部分を取り除くために活性酸素を出動させます。
神経性の炎症は、神経線維が次々と連鎖反応を起こしてスパークしているような
ものです。大元だけを収めてくれれば良いのです。そうすれば最小限の神経損傷
だけですむのです。
ところがこの活性酸素と言うのがなかなかに大雑把な性格で、最小限の大元だけ
掃除してくれれば良いものを、「このあたり全部やっとけば確実だろう」とばか
りに、広範囲を掃除してしまいます。これでは障害が大きく残ってしまいます。
その活性酸素の力を抑制するのがステロイドなのです。
これは骨折などでも同じ事が起こりますので、特に脊椎の骨折などではステロイド
の投与は大事な事になります。ステロイドは神経組織を保護・温存する為に必要
な薬でもあるのです。

発症原因と症状
キャリア(感染しているが、無症状)であるウサギさんの発症原因は様々です。
何らかの病気や環境の変化(ストレス)で引き起こされ、急性の場合はあっという
間に亡くなってしまい、飼い主の気持ちが追いつかない事もあります。
特に季節的に寒暖差が激しい時は要注意。夏場の熱中症にも注意です。
また良く言われる斜頚・眼震・開帳肢以外にも、病変が起こった部分次第で様々な
症状が見られます。目に病変が現れる事もありますし、テンカンに似た症状を起こ
す事もあります。

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