鳥類掲示板過去発言No.1700-200408-95
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投稿日 2004年8月19日(木)01時18分 投稿者 はたの
獣医師ではありませんがご参考まで。 手乗りになる、というのがどういうことか、から考えてみましょう。本来ならば、インコは巨大な哺乳類であるヒトを怖がるのが当然です。単純に、雛から育てれば手乗りになる、というものではありません。そこには、「刷り込み(刻印付けともいう)」という、「かなり不可逆的な」過程があります。 普通に親に育てられれば、親の姿を見て、まず、「自分が何なのか」、次に、「将来のペア相手はどんなカタチなのか」を知ります。どちらも親、つまり同種ですね。 親から離して手乗りにしようとする時、親はいませんが、複数で育てるなら、兄弟姉妹(血はつながっていなくても)は目に入ります。すると、「餌をくれるモノ=親のはず→が実は人間」に刷り込まれる傾向と、「生まれつきなんとなくぼんやり知っている自分の姿に似ている兄弟姉妹」に刷り込まれる傾向とがぶつかります。これは、何日齢で親から離したか、親代わりの人間がどのぐらいの密度で接したか、兄弟姉妹の有無や数、によって、どこでバランスが取れるかが決まってきます。ですから、差し餌で育てたインコでも、ヒトを恐れる程度が異なったり、インコに対して発情するもの、ヒトに対して発情するもの、両方に発情するもの、どちらにも発情しないもの、などと分かれるわけです。 この過程は不可逆性が強いので、これからやり直すことは困難です。ショップから引き取ってきた日齢もあまり関係ありません。むしろ、ブリーダーなりショップなりで、親代わりのヒトの接触密度が足りなかったということでしょう。 お体と床の間に逃げ込むのは、カムラさんの体全体をまだ認識できていなくて、物影に隠れているつもりなのでしょう。手に乗らないのは、手が親しい存在であるという刷り込みが不十分なためでしょう。 ですから、原則としては、世話係になるしかない、とまず諦めるのをお勧めします。もしかすると、刷り込みはきちんと成立しているのが、移動その他のショックでおびえているだけ、ということもなくはありませんが、どちらかといえば悲観主義をとっておくほうが、それ以上失望せずにすみ、小さな進歩も喜べますから。 そして、カムラさんの姿がなるべく長時間見えるケージに変更を。 現状だと、インコからしてみると、「突然天井が開いたら巨大な顔が出てきて餌」ですから、慣れようがありません。見慣れてもらうこと、餌の支度をしているところを見せるのが肝心です。 そして、餌やり時には、ちゃんと認識しているであろう餌やり用のスプーンなどを目立つように見せびらかしながらゆっくり近づくようにしてください。手を紹介するのも、掴むのではなく、手を床につけておいて、餌で釣って、インコが自分から手に乗るように心がけます。どうしても手を嫌うなら、まずはナニカの布、次に手袋、あるいは布の下に手をおいて、というように段階を踏んで。 床に寝そべって、というのは威圧感を減ずるのに大変効果的ですからそのままでどうぞ。 「逃げる・中立・甘える」という三つの対応のうち、「中立から少しでも甘える側」に持っていくのが肝心です。山の稜線を超えて行き来するボールをイメージしてください。天辺が「中立」です。「逃げる」側斜面をボールを押し上げるのは大変ですが、一度上に運んで、ちょっとでも「甘える」側斜面にいけばしめたものです。ボールを押し上げるのが大変だからといって、山に穴を開けようとしても難しいのです。 もしも、一時的に表現できていないのではなく、「刷り込み」が弱いとなると、劇的な改善は望めませんが、幸い、「刷り込み」の次には「社会化」という過程がきます。同種とは思ってもらえなくても、害のない隣人、おいしいものをくれる相手、と思ってもらうことは出来ます。擬似親子関係(後には擬似ペア関係)とはいかなくても、穏やかな好意を伴う友人にはなれます。吐き戻しやら過発情やらを考えると、コンパニオンとしてはかえってよいぐらいもしれません。 そのためにも、無理に馴らそうとするのではなく、なるべく怯えさせないことを重点に、じわじわと関係性の改善を試みられるのがよいと思います。できる限り、ヒトから近づくのでなく、インコに選択肢を与え、インコから近づいてくるように仕向ける工夫を(1日の必要量が足りている範囲で、空腹を利用するのも一案です)。 なお、飛べるようになった直後は事故が起き易く、フンづかまえての治療は怯えさせるに決まっていますから、くれぐれもご慎重に。 |
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