鳥類掲示板過去発言No.1700-200410-74
>きくいちさん |
投稿日 2004年10月27日(水)15時54分 投稿者 プロキオン
これからも闘病生活が続くと思われますが、あきらめずに頑張ってくださ いね。 >他の病気の可能性について尋ねても、ミミダレが無いので脳腫瘍ですと 、取り合って戴けず、御自分で掴めないので、ろくに身体の異常も調べ て戴けず。喉の音の事も、プチプチ言うならそのう炎でしょうと 診察もしていない人間があれこれ言ってはいけないのですが…。 鳥類は、耳介と外耳道を欠いておりますので、鼓膜が破れるとか、炎症で 溶けてしまうような事態にならないと所謂「ミミダレ」は確認できません。 また、体温が哺乳類よりも高いので、炎症滲出物もミミダレ状態ではなく 乾酪化しており、卵焼きやチーズのような状態をしています。 普通は、鼻孔周辺の汚れや鼓膜の突出がないかという所見の捜し方をしま す。 「プチプチ」音も、呼吸器症状の一環という捉え方をするのが普通である ように思います。これは飼い主向けの飼育書でも そのように記載されて いるはずです。 鳥類における神経系の感染症は、小動物診療の分野では、どうにも軽視さ れているきらいがあるようです。 感染症なら、病態が悪化して落鳥するはずという考えが支配的なのでしょ うし、臨床家の教科書そのものが、そのような疾病を取り扱っていないた めもあると思います。 私のように鶏の疾病を見てきた者にとっては、何故かくも無視されている のかが、むしろ奇異に感じます。 私は、県において、「病勢鑑定」の仕事を長くやってきていて、特に病理 学の分野を担当していました。 ですから、「非化膿性脳炎」を呈していて死なない鶏というのも、実際に 多く承知しています。逆に言いますと、致死的と言われているウイルス疾 病においても斜頚なのに自分で餌を拾って元気にしているものもおります。 これは、これは1つの種類のウイルスが何から何まで、強毒株ではないと いうことなのです。 強毒株ばかりであれば、ウイルスが感染すべき対象の鳥は、すべて死に絶 えてしまい、ウイルス自身も全滅せざるえないからです。弱毒株として、 野外に長く残存して、次の世代を担うウイルスを残す必要があるのです。 生命体の1種族としては必要な戦略と言えます。 「脳血栓」というのも、鳥類においては、どういうものなのでしょう? 血栓というのは、文字どうり、血液凝塊(赤血球の凝固したもの)が血管 内に詰まったものですが、鳥類の赤血球は楕円形をしており、しかも有核 赤血球であるため、壊れやすいように思います。 検査に使用する血液を採血する際にも、赤血球そのものを使用する目的の 場合は、ひじょうにシリンジの操作に注意を必要としますし、自動血球計 算機ような機器も、鳥類の血液の取扱いは苦手としています。 と、同時に鳥の身体の方でも、脳内に血栓が生じている状態というのに遭 遇したことがありません。グリア細胞による貪色や継続する融解像が主体 なのです。 通常は、血栓が血管の血流を遮断してしまえば、そこから先の脳組織は壊 死するしかないのです。その壊死した部分を破壊し吸収するための反応が 貪色や融解であり、脳組織は脂肪に富んでいるために凝固壊死を起こす事 なく融解するのです。その状態が「脳軟化」と呼称されるものなのです。 鶏におけるウイルス性感染症では、その感染抗体の検出に赤血球を指標と して使用します。これは、それらのウイルスの多くが赤血球を凝集する性 質をもっていて、正常な鶏の赤血球と検査用のウイルスを混合すれば、凝 集するのです、このときにその疾病に罹患して免疫抗体を持っている鳥の 血液を加えてやれば、血球の凝集は抑制されます。 このときに検査用のウイルスの種類が始めから判明していれば、疾病の診 断が可能となります。これが、「赤血球凝集抑制試験」通称HIテストと 呼ばれる試験です。 なんだ、赤血球が凝集されるのであれば、血栓が形成されるのに何の不思 議があるのかということになりますが、このように確立された検査方法の 対象となっている疾病においても、脳血栓には遭遇しがたいということな のです。 実際、犬においても、急に起立不能になった症例に「脳血栓」とか「脳梗 塞」という診断が下されている例は、私も承知しています。とかく脳の中 のことは分からないということで仮診断してしまう臨床家も多いのです。 実際、脳内の血管造影やMRIに頼らないとなりませんので、街の臨床家 には、いささか分の悪い面もあります。 それでも自腹を切ってMRI検査に持ち込まれる先生もいらして、少しず つではありますが、そのような疾病の本態が明らかになりつつあります。 残念ながら、そこまでやってくださる先生というのは、希有な存在といえ ます。私なんかにはとてもまねできることではなく、ありがたい存在です。 まず、もって文鳥やインコに対してMRIにかけましょうとはならないは ずなのです。街の臨床家なら、経過と個々の治療への反応から一つひとつ 積み重ねながら真相に近付いて行くというしかないのではないでしょうか ? その間の不手際、不勉強というのは、飼い主さんとしては、堪らな い事と存じますが、歩き始めた幼子がいきなり富士山頂に立つこともない わけでして、つまづいて転んだ数だけ、より遠くまで歩く事を心掛けるし かないように思います。 |
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