爬虫類・両棲類・カメ掲示板過去発言No.2000-200802-72
名前を書かれたカメの話 |
投稿日 2007年12月12日(水)12時55分 投稿者 パールちゃん
友人の話です。 小学生のころクサガメを飼っていたのですが、両親の離婚やそれによって母親とともに引越しをすることになりどうしてもカメを飼えなくなってしまいました。 泣いて泣いてカメを捨てたくないと訴えたそうですがその願いは叶わず、父親といっしょに近所のお寺の池にカメを放しに行くことになりました。 その池にはカメがたくさん住んでいたのでここなら生きていけるだろうと父親が判断したのです。飼っていたカメはおそらくこの池で生まれたもので、子ガメ時代に迷い出ているのを父親が拾って息子にあげたものでした。 池へ放すという前日、友人は「ぼくのカメだとわかるようにしてほしい」と父親に頼みました。父親は手近にあった白いペンキでカメの甲羅に大きくカメの名前を書きました。 翌日、父親とともにお寺の池にカメを放しに行きました。 カメはゆらゆらと池の底に消えていきました。友人は、カメを放したのは悲しかったけれど、ぼくのカメがこの池にいるんだと思うと子ども心にちょっと誇らしかったそうです。 やがておとなになり、就職して遠方に行きました。両親の離婚後、父親とは一度も会っていませんでした。 その父親が亡くなったという連絡がありました。離婚後の母親の苦労を知っているだけに父親に対してちょっと恨みもあり、お葬式には行きませんでした。 それからしばらくして郷里に帰ったとき、友人はなんの気なしにカメを放したあのお寺に立ち寄りました。 子どものころカメを飼っていたことも、そのカメを池に放したことも遠い記憶のかなたでしたので、池にたくさんカメがいるのを見て「ああ、そういえば昔ここにカメを放したなあ」とやっと思い出す程度でした。 甲羅干しをしているカメたちのなかに、1匹おかしな色合いのカメがいました。汚れた白っぽい点々が甲羅のところどころにあります。甲羅のてっぺんが少し陥没していてそこにははっきりと白い色がついています。 みるみる記憶がよみがえりました。カメを落としてしまい甲羅のてっぺんがへこんでしまったこと、そのくぼみに父親がべったりと白いペンキを塗ったこと、そこだけなかなかペンキが乾かなくて何度も指でさわってみたことなど、そのときの光景をはっきり思い出しました。 ぼくのカメだ! カメは大きくなって堂々としていました。 その姿を見て友人は、亡くなった父親への思いが晴れていく気持ちがして、その足で父親のお墓参りに行ったそうです。 以来、郷里に帰るたびにお寺の池をのぞいてみているそうですがあのカメには会えません。 信心などない友人ですが、一度だけでいいからお墓参りに来てくれよとおやじが思ってカメに再会させたんじゃないかなあと言っています。
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