動物の愛護掲示板過去発言No.6000-200212-45
質問の出発点 |
投稿日 2002年9月29日(日)12時59分 プロキオン
かおりんさんの質問の出発点に いささか問題があるのではないでしょうか? 飼育動物というのは、そもそも洋の東西を問わず、人間の所有財産です。牛や 馬そして鶏や豚等の家畜だけでなく、犬や猫についても有用家畜の1つとして 人間と暮らして来たのが過去の経緯です。 したがって、これらの動物を守るという行為も法律に期待するのであれば、「 財産の損害」「器物の損壊」という概念が適応されるのは、当然の解釈といえ ます。 法律上、財産や器物であれば、これに対する不法行為は、加害者がその加害行 為認めていれば、通常略式起訴の上、罰金ということになります。(再犯を重 ねていれば別ですが) 動物を財産や器物ととらえれる概念でいけば、「100万円以下の罰金あるい は1年以下の懲役」というのは、あきらかに異質です。初犯の加害者にいきな り、この刑を適応するとするなら重すぎると言えます。 法律は、相互に矛盾しないことが必要ですので、動物愛護法にこの量刑が盛り 込まれたこと自体は、かなり踏み込んだ内容と私は考えます。 しかるに、昨今この量刑が軽すぎるもっと重くするべきだという活動が見られ ます。福岡の猫の事件が関わっています。 動物は命あるものであり、その生存を守るべきものとして「動物愛護法」は改 正されていますが、同時に一部の過激な愛護運動とも一線を画すことを求めて います。 福岡の事件の犯人が許せないから、もっと罪を重くしなさい、「100万円で も1年でも駄目」というのは、いささか筋違いです。なぜなら、犯人は動物好 きの人達を悔しがらせる目的で実施したことであり、刑罰を重くしろという運 動をすること自体が犯人の目的を最大限に達成させることになるからです。 もとより、彼も警察に逮捕されて強がってうそぶいているようなのですが、内 心はかなり「しまった!」と思っているはずです。 ですが、このような運動 が大きくなれば、また虚勢を張って余計なことを言うようになると思います。 法は法として、余計な雑念をもたずに淡々と執行されて良いのではないでしょ うか。 量刑を重くしたからといって、事件を引き起こす人間がいなくなるとは思えま せん。私にはそれ程楽天的に考えられないのです。 動物愛護法が力をもってエスカレートしていけば、それは「生類憐れみの令」 になってしまいます。この定めとて、本来は生き物すべての命を大切にという ことが主旨であったはずです。それをエスカレートさせてしまったものは、や はり人間です。法律を利用して何かを意図する人間の存在までは無くすことは 法律自体にはできません。1つの光を投げかければ、また影もできるのです。 命を守ろうというのは、人としての根源的な願いであり、それは法律によるの ではなく、自らのモラルと実行行為によってなされなくてはなりません。 動物愛護法を振り回せば、やがて犬猫の避妊去勢を実施しない飼い主も量刑に 服す必要が出て来ます。毎年、不用犬猫として処分される数を考慮すれば、ま ことに大勢の受刑者が出てくることになります。 野良犬野良猫も捨てる飼い主がいるからです。これについても罰則は設けてあ りますよね。さらに、飼育とは名ばかりの情況も多々見聞きします。 命を粗略に扱っている点については、これもまた同じことです。これらの飼い 主をひとりひとり摘発していくという行為こそが「生類憐れみの令」が辿った 道なのではないでしょうか。 また、犬や猫の問題をさておいても 私達は牛や豚等の肉を食べているのです よ。彼等も命あるものなのです。犬や猫の命は大切で牛や豚はどうでも良いと いう理屈は成立しないはずです。この問題を持ち出してしまうと話が別問題に なりかねませんので、これ以上は触れませんが、忘れてほしくない事柄です。 猫について搾って言及するなら、我が国においては猫の肉を食べるという習慣 が存在しました。それもつい最近までです。2000年1月のある新聞に掲載 されていた記事です。県が止めるように指導にのりだしたという内容なのです が、その後どうなったかまでの追加報道はありません。 福岡の事件の犯人により重い刑罰を求めようという考えがあるのであれば、猫 の肉を食べた人達を黙認するということも矛盾です。 矛盾しないようにすればする程、世の中おかしくなっていくように思います。 かおりんさんの質問の出発点に「福岡の事件」があるのであれば、犯人にもっ と重い刑罰をという気持ちがあるのであれば、それは間違っていると思うので す。 特定の事件や個人への気持ちをまぜこぜにして、論じあうことができる程この 問題は小さくないのです。それほど、広く大きな問題なのです。 だからこそ、ひとり一人の個人が自分の問題として、自らができうることを確 立していく必要性を感じています。 法は法で厳正に執行されれば、良いのです。1つの事件やその犯人にこだわり すぎることの方が健全でないなものを感じます。 福岡の事件とて、犯人がいくら挑発的であったとしても、法律が認める最高刑 が申し渡されるとは限らないでしょう。 それを不満に感じると言うことが、犯人の挑発に乗ってしまっているというこ とになると思います。 この事件を無関係に考えれば、100万円以下の罰金も1年以下の懲役も決し て決して軽い罰則ではありません。 それを重く感じるも軽く感じるも、何を出発点としているかというだけです。 |
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