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いつか読書する日      


2004年 日本 ロマンス   

<監督>緒方明
<キャスト>田中裕子 , 岸部一徳 , 杉本哲太 , 香川照之 , 堀部圭亮

<ストーリー>
50歳で独身の大場美奈子(田中裕子)は、毎朝、坂の多いこの町で、朝は牛乳配達をし、昼は、スーパーでレジ打ちをして働いている。彼女の中学時代の同級生、高梨槐多(岸部一徳)も、同じ町で、病気療養中の妻(仁科亜季子 )の看護をしながら、市役所で働いていた。二人は中学時代、付き合っていたのだが、今は、ほとんど顔を合わすこともなくなっていた・・・。

<感想>
冒頭、田中裕子が、走ります。
坂の多い町。撮影は、長崎で行われたようです。
確かに、こんなに坂や階段が多くては、車で配達というわけには、いきそうにありません。
そんなわけで、重い牛乳瓶を肩から提げて、走る走る。
撮影は、さぞや大変だったことでしょう。実際、この映画の公式サイトに、3時に起きて、牛乳配達の”修行”をしたと、書いてありました。
そのせいか、映画の中の田中裕子は、まるで、本当に、何十年も、同じ道を走っていたかのように、軽快に階段を上っていました。

ストーリーは、ある出来事から疎遠になった、35年後の初恋同士の男女と、男の妻の話です。
何十年も一緒に暮らしてきて、気がつかなかったことが、死ぬ間際になって、はっきりと分かってしまう。そんな不思議なこともあるかもしれません。さえざえとした精神状態になるからでしょうか。
死んでゆくときに、夫を本当に愛している女性にゆだねて死にたいと思う心情が、私には、まだよく分かりませんが、死を前にした人間には嘘をつけないって事でしょうか。
そして、なにより、それだけ、この二人の初恋の思いが強かったという事でしょうか。

前半は、淡々と美奈子の日常が描かれていて、彼女の気持ちが徐々に分かってきます。彼女の彼に対する強い思いも・・・。突然断たれた思いだからこそ、なおさら強く残ってしまった彼への思い・・・。
ずっと独身で、彼のことだけを心の底で、思い続けていた美奈子の気持ちは、私にも、よく分かるような気がします。

ただ、槐多の思いが、最初、よく分かりませんでした。病気の妻が亡くなるのを待っていたかのように、行動するっていうのは、どういう事か・・・。でも、彼も、看病をしながら、思ったのかもしれません。人間とは、はかないものだと。そして、初恋を絶たれてからの35年と、妻を亡くしてからの、これからの35年。これからは、自分に正直に、生きていこうと、思ったのでしょうか。

痴呆症の作家の夫のシーンは、本人は、真剣なのだろうけれど、その真剣さが、ちょっと笑えてしまいました。実際に、あんな時の流れを感じているのかもしれないですねぇ。
同じように、中年男女が、初恋の頃の35年前に戻って、体を合わせるシーンも、真剣なのに、ちょっとコミカル。人生って、こんなものなのかも。
ラストは、あまりにもあっけなく、美奈子の気持ちを考えると、痛くて、呆然としました。(2006,08,18)



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