ヴェラ・ドレイク |
2004年 イギリス・フランス・ニュージーランド 犯罪
<監督>マイク・リー
<キャスト>イメルダ・スタウントン , ジム・ブロードベント , エディ・マーサン, サリー・ホーキンス
<ストーリー>
1950年、イギリス。家政婦のヴェラ・ドレイク(イメルダ・スタウントン)は、夫と2人の子供達と暮らし、貧しいながらも幸せな生活を送っていた。彼女は、家族には内緒で、家政婦の他に、密かに、望まない妊娠をした女性の堕胎もしていたが、ある日、そのことが警察に知られてしまう・・・。
<感想>
冒頭がすばらしいです。
このシーンで、ヴェラが、どんな性格の女性なのか、それまでどんな人生を歩んできたのか、まるで善意の塊のような彼女の全て分かります。何事にも骨身を惜しまず、貧しくても幸せに生きてきた彼女。
そんな彼女が、家族にも内緒にしていたある仕事。実はそれは、法律では、認められていない、違法堕胎だったのです。
違法であることを知りつつも、女性たちを助けずにいられなかったヴェラ。その心に、一点の曇りもなく、ただひたすら、苦しむ女性たちのことを思っての行為。
でも、それが、発覚してしまえば、法律がある以上、罪になるのは、仕方がないことでした。
警察が来て、自分がどうなるのかが分かったヴェラの気持ち。せっかくのお祝いの日なのに、自分のせいで、娘や家族が、辛い思いをする。彼女の表情をひたすら追うカメラ。泣かされました(T_T)。名演です。
人間には、幸せしか知らずに生きてゆく人と、幸せ以外のことを知ってしまった人がいるわけで、そんな人生の裏側を見てしまった若い女性を助けるために、罪を犯してしまったヴェラ。彼女の、苦しんでいる女性を助けたいと思うその気持ちがよく分かりました。彼女を逮捕するときに同行してきたベスト婦警が、気の毒そうに、そして大切に、ヴェラを扱ってくれていたのは、彼女にも、それが分かったからなんでしょうねぇ。
彼女に課せられる量刑がどのようなものなのか全く想像できなかったので、だいたいの所が分かるまでは、どんな結果が待ち受けているのか、怖ろしくてたまりませんでした(T_T)。
ヴェラ・ドレイクを演じたイメルダ・スタウントンは、この映画で、アカデミー主演女優賞にノミネートされましたが、授賞式当日、会場では、他の華やかな女優に混じって、とても地味だったのを思い出します。でも、立派にあの場にいるだけの価値のある女優さんですね〜〜。
彼女の演技は、ヴェラそのものに成りきっていて、本当にすばらしかったです。
この深みのある演技を引き出したのは、監督のマイク・リーでした。彼は、俳優に、その役柄以外の情報を与えずに、リハーサルを繰り返して、彼らの感情を高めてゆく演出をするそうです。俳優にとっては、負担の多い演出方法だと思いますが、この作品は、その功を奏して、すばらしい出来になったのだと思います。
(2006,09,21)
|
|
|