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宮廷画家ゴヤは見た      


2006年 アメリカ・スペイン   

<監督>ミロス・フォアマン
<キャスト>ハビエル・バルデム , ナタリー・ポートマン , ステラン・スカルスガルド , ランディ・クエイド

<ストーリー>
18世紀末。スペインの宮廷画家に任命されたフランシスコ・デ・ゴヤ(ステラン・スカルスガルド)は、王妃の肖像画を描くだけではなく、権力者を風刺する版画も描いていた。ある時、彼が肖像画を描いていた裕福な商人の娘、イネス(ナタリー・ポートマン)が異端審問所への出頭を命じられる。彼女は無実無根だったが、許されず、拷問を受けて、嘘の告白してしまう。彼女を助けるためにゴヤは奔走するのだが・・・。

<感想>
宮廷画家ゴヤの目を通して、18世紀末からの混乱のスペインが描かれます。

まず驚いたのが、ゴヤの絵。ゴヤというと、「マハ」だと思っていたのですが、それは全く出てこなかったので、あれ?私の思っていたゴヤと違うのかしら??と、戸惑ってしまいました。実際の彼は、宮廷画家として、王家の人々の絵も描き、教会内の装飾も描き、そして、権力者を風刺した版画まで描いていた人なんですね〜〜。
最高権力者から、下々の民衆まで、いろいろな階級の人々を見てきた彼だからこそ、彼の目を通してこの時代を見据えた映画が出来上がったのでしょう。

それにしても、異端審問。なんと怖ろしい制度でしょう。
教会の権力を強める目的の制度なのでしょうが、居酒屋で、豚肉を食べなかったからといって、その人間の一生を狂わせてしまうなんて、教会とは、宗教とは、いったい何なのだろうと思います。
それなら、豚肉をみんなの目の前で食べて見せたら済む事じゃないですか。そんな簡単なことをせずに、拷問で思った通りの告白をさせるなんて、ひどすぎます。

悲しい運命を背負ってしまったイネス役をナタリー・ポートマンが演じています。
娘時代の彼女は、ちょっと気の強いところのある、天真爛漫な天使のような女性です。それが、身に覚えのない疑いを掛けられてしまい、次に現れた彼女の姿の哀れなこと(TT)。あんな事がなければ、きっと幸せな人生を過ごせたでしょうに・・・(TT)。映画を見終わった後もずっと、彼女のことを思うと、胸がふさがれる思いでした。

また、一時は、教会の力を後ろ盾として、大きな力を持っていたハビエル・バルデム演じるロレンソ神父も、数奇な人生を歩むこととなります。彼の信念にどんな変化があったのか、彼なりの筋を通した生き様だったのかもしれません。ハビエル・バルデムは、スペイン出身の俳優なので、きっとこの役も力が入ったことでしょう。

ともすれば分かりにくい、中世ヨーロッパの歴史ですが、ゴヤの目を通して描かれたことで、上から下まで平等に映し出されて、分かりやすい歴史映画となっていたと思います。(2008,10,11)



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