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グラン・トリノ      


2008年 アメリカ 犯罪   

<監督>クリント・イーストウッド
<キャスト>クリント・イーストウッド , ビー・ヴァン

<ストーリー>
妻に先立たれたウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は、息子たちにも疎まれる頑固な老人だった。ひとり暮らしを始めたウォルトを心配した神父が訪ねてきても、いつも追い返していた。そんな彼の気に障ることのひとつが、隣に住む東洋人一家。そんなある日、その家の息子・タオ(ビー・ヴァン)が、不良に脅かされて、ウォルトの愛車グラン・トリノを盗もうとしたことから、隣家との交流が始まる・・・。

<感想>
予告編を見て想像した通りの、私好みの映画でした。
頑固な老人の、男の美学を描いた作品です。

なんといっても、イーストウッド演じるウォルトがいい!!
いまだに50年代の朝鮮戦争時代を引きずる男、ウォルト。今の若者世代には、到底融合できず、気に入らないことがあると、犬のように低く唸りながら、皆を蹴散らしてしまいます。
とはいえ、80近い御大です。身体も衰えてきて、自分の死期も悟ります。

若者相手に吠えまくる彼の姿も、やはり寄る年波には勝てず、どこか痛々しい。ただ、気迫だけは、若者に負けていないので、まだ、若者たちも、彼に抵抗できません。でも、その状況が反転するのも、時間の問題のように見えました。
そんなようすの彼の姿を見せられて、もう、彼のことが、愛おしくてなりませんでした。

頑固で、人種差別の固まりのような彼が、お隣に住むスーのおかげで、東洋人の隣との交流もでき、彼らを少しずつ理解し始めて、その交流を楽しめるようにもなったのですが・・・。

彼の歩んできた人生の重みと、人種の違う隣人との触れ合い。
心の通わない息子達よりも、言葉が分からなくても心をふれあうことの出来る異人種の隣人。
彼のような付き合いが出来たら、最高だろうなと思いました。

そして、男の美学を貫き通したラスト。
それは、イーストウッドの思いを、そのままを描いたものなのかもしれません。

イーストウッドも、もうそろそろ80才。さすがに年を取りましたね。
でも、彼の眼光の鋭さ、ユーモアのセンス、彼の思いには、確かなものがありました。もちろん、頑固老人の演技も、すばらしかったです。
それだけに、肝心のタオ役のビー・ヴァンが、もうちょっと演技がうまかったらな〜と、残念に感じました。

車に詳しくないので、知りませんでしたが、題名の”グラン・トリノ”は、アメリカ、フォードの名車。アメリカの誇りのシンボル的な存在のようですね。その誇りをイーストウッドがタオに残したところにも、彼の思いがあるのでしょう。(2009,04,25)






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