サラエボの花：シネマチェック：

サラエボの花　　　

２００６年　ボスニア・ヘルツェゴヴィナ・オーストリア・ドイツ・クロアチア

＜監督＞ヤスミラ・ジュバニッチ
＜キャスト＞ミリャナ・カラノヴィッチ , ルナ・ミヨヴィッチ

＜ストーリー＞
ボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエボで、１２歳の娘、サラ（ルナ・ミヨヴィッチ）とふたりで暮らすエスマ（ミリャナ・カラノヴィッチ）。苦しい暮らしの中で、サラの修学旅行の費用を捻出するために、エスマはナイトクラブで働くようになった。父親が戦争の殉教者（シャヒード）であると聞かされてきたサラは、旅費が免除されると、母親に告げるのだが・・・。

＜感想＞
1992年に始まったボスニア・ヘルツェゴビナ紛争。わずか十数年前の出来事なのですが、遠い地域の内戦ということで、無知な私は、あまり内容を知らずにいました。
この映画を見たことで、遅まきながら、改めて、この戦争の悲惨さを知り、愕然としたのでした。

TVドラマシリーズの「ER」のドクター、コバッチュがクロアチア出身で、内戦により妻子を失っていましたし、「あなたになら言える秘密のこと」のヒロインも、たしか、この内戦の被害者でした。ヨーロッパでは、第二次世界大戦後の最悪の紛争だったということです。

サラの母親、エスマは、戦争被害者で、国から補助金が出る時だけセラピーに通う生活。彼女自身は、あまりの悲惨な体験のために、セラピーに通うことさえも、耐え難く感じていたのかもしれません。
一方娘のサラは、近く行われる修学旅行を楽しみにしていて、ある日、ひょんな事で仲良くなった男の子と学校をさぼったりするのですが、その子との会話の中で、ふと、自分の出生の秘密を感じ始めてしまう・・・。
そして、明かされたその秘密とは・・・。

普通に暮らしているように見える人たちの中に、戦争被害者が多いことに、まず心が痛みます。
そして、彼らも生きていかなければならないこと。そして、その中からも、新たな差別や、格差が生まれてゆくこと。やりきれません。
でも、苦しみながら、もたらされた深い絆は、もはや揺るぐことはないのでしょう。そのことに希望が持てました。(2008,12,07)