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未来を生きる君たちへ      


2010年 デンマーク・スウェーデン (HAEVNEN)
   

<監督>スサンネ・ビア
<キャスト>ミカエル・パーシュブラント, トリーヌ・ディルホム, ウルリク・トムセン

<ストーリー>
デンマーク。母親が病死した少年クリスチャン(ウィリアム・ヨンク・ユエルス・ニルセン)は、転校先の学校で、いじめを受けているエリアス(マルクス・リゴード)と親しくなる。そしてある日、エリアスをいじめていた生徒を袋だたきにして、問題になる・・・。

<感想>
2011年のアカデミー賞外国語映画賞受賞作です。

デンマークに住む2つの家族の物語です。
それぞれに、問題を抱えていて、その問題に対する明確な答えが、見つけられないで、葛藤する姿を描いています。

いじめ、離婚、暴力、死など、私たちのまわりには、なんと多くの、答えの出ない問題が、渦巻いていることでしょう。

子どものいじめ問題ひとつ取っても、何年も前から問題になっているにも関わらず、いまだにこれという、解決策もなく、新たな事件が起こるたびに、右往左往しているのが実情です。

理不尽な暴力に対して、無抵抗を子どもたちに説く父親の姿は、理想的ですが、それだけで全てが丸く収まらないのも、また現実でしょう。
はたして、暴力には、無抵抗が良いのか、黙殺が良いのか、それとも、反撃がいいのか。
頭では分かっていることでも、実際には、難しい事ばかりです。

この映画の少年二人は、その象徴として、描かれています。
クリスチャンは、ある意味、とても正直な子で、暴力には、暴力で対峙するのが最善だと思っている子でした。
一方、エリアスは、じっと耐えて、嵐が過ぎ去るのを待つタイプ。
二人の行動に、ハラハラさせられて、思わず、引き込まれてしまいました。

原題の「HAEVNEN」は、”復讐”という意味だそうです。
一時の感情に流されて、暴力に訴えると、取り返しのつかないことになるかもしれません。
反面、復讐せざるを得ない心情も理解できたりします。
この辺りの判断は、とても難しくて、抑えきれない怒りとか、悲しみを持つのも、人間である以上、仕方がないようにも思います。
でも、人間は、理性で、この連鎖を断ち切らなければならないのだと思います。
”未来の君たち”は、どう考え行動する道を選ぶのでしょう。

スサンネ・ビア監督作は、見ていて辛い映画が多いのですが(って言うか、全部そうです(^^;)、細やかな感性で描かれていて、納得する部分が多いです。(2012,11,04)



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