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善き人のためのソナタ |
2006年 ドイツ
<監督>フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
<キャスト>ウルリッヒ・ミューエ , マルティナ・ゲデック , セバスチャン・コッホ
<ストーリー>
1984年、東ベルリン。ゲルド・ヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)は国家保安省シュタージの一員で、反体制の疑いのある人物を監視する仕事をするエリートだった。彼の次の標的は、劇作家ゲオルク・ドライマン(セバスチャン・コッホ)。ヴィースラーは、彼を監視するうちに、なぜ彼を監視しているのか、その事実に気がつくのだった。そして、彼の取った行動は・・・。
<感想>
ベルリンの壁が崩壊する5年前の東ドイツでの物語です。
息の詰まるような一党独裁政権において、シュタージという強大な監視システムがあり、そこで、人々の生活が、常に監視されていたのでした。こんなことが実際に行われていたということが、まず、驚きなのですが、そこまで神経質にしていないと、国を統治できないというのは、やはり、おかしな話ですよね。こんなことが続くわけがないのですが、そんな日常にずっぽりはまってしまうと、こんな非常識が常識になってしまうのが怖いところです。
そんな仕事を忠実に続けていた主人公、ヴィースラー。
彼の味気ない毎日と、彼が監視対象としていた、ドライマンとクリスタの生活の感情豊かで人間的な生活との対比が見事です。
そして、ヴィースラーが耳にすることになる「善き人のためのソナタ」。彼らの生活を知り、この曲を聴くうちに、彼の内面に静かに変化が起こってきます。これは、人間として、当然の感情なのでしょうが、この独裁政権下では、致命的なのでした。
彼の取った行動は、結果的には、新たな悲劇をもたらしてしまったのですが、彼に、それ以上の、何が出来たでしょう。
そして、このことは、このまま誰にも知られず、ヴィースラーの心の中にだけに埋もれていたかもしれないのですが・・・。
ベルリンの壁崩壊後、このシュタージの情報が、公開されたというのは、驚きでした。自分に関する監視の中身を突きつけられて、ドライマンは、どんなに驚いたことでしょうか。
そして、ラスト。このラストがすばらしいです。二人のために、何の見返りも期待せずに、全てを擲(なげう)った彼へのプレゼント。彼の気持ちを考えるには、あまりあります。
ヴィースラーを静かに演じきったウルリッヒ・ミューエ は、今年7月に、胃ガンで、亡くなっていたんですね。ご冥福をお祈りします。(2007,12,16)
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