ある男が突然、失明した。 視界が真っ白になる病気。 原因不明のまま、伝染病のように感染は広がってゆく。政府はかつての精神病院を収容所にして、患者の隔離を始める。そこでは、秩序が崩壊し、人間の本性がむき出しになってゆく。阿鼻叫喚の世界。やがて国中が目の見えなくなる病気に侵されて・・・・。 圧倒的な空想力で描かれる現代の寓話。 (本見返しより) 1998年ノーベル文学賞受賞サラマーゴの作品です。 私が、全然知らなかった本を、お友達のKさんが、教えてくれました。感謝(^^)。 衝撃的な本でした。 ノーベル文学賞というと、ちょっと敬遠したくなる分野なのですが、これは、出だしから、謎含みの書き出しで、面白く読み始められました。 何しろ、運転中の男が、急に視力を失ってしまうのですから。 それにしても、この発想は、どこから湧いたのでしょうか。 あとがきを読むと、レストランの食事中に、思いついたそうですが、その時、彼は、その発想に、声を上げたのでは、ないでしょうか。 失明すると言うこと、しかも、すべての人々が・・・。 これは、想像を絶する世界です。 こうなると、人は、人として、生きてゆけなくなるのです。 小さい頃にしませんでしたか? 目を閉じて、どこまで歩けるか・・・(私は、たまに、今でもしますが・・・(^^;) たった5歩歩いただけでも、不安で、目を開けてしまいました。 そんな状態で、生きてゆくためのいったい何が出来るでしょうか。 もちろん、現在、目の不自由な方も、たくさんいらっしゃって、普通の生活をされていますが、やはり、それは、目の見える人の介助と、その他、様々な規則や決まり事があって生活が成り立っているもので、それらが、崩壊したら、どうなのでしょうか。 人には、様々な器官があって、どれ一つをとっても、皆、重要な器官なのですが、 たとえ、その一つの器官の機能が失われても、人間性までは、失わないはずです。 もちろん、心臓とか、肺とか、生きてゆく上で、絶対必要な器官を失えば、命を失うのですが、それは、命をなくすのであって、人間性を失うのとは、違うでしょう。 すべての人の視力がないと言うことは、人間性をなくし、動物以下の生物集団になってしまうということで、読みながら、絶句(と言うのも、変ですが・・・(^^;)してしまいました。 規則も、羞恥心も、仲間も、家も、恋人も、夫婦も、何もかもが、意味をなさなくなってしまうとは、なんと、悲しいことでしょうか。 作者は、登場人物に、名前を付けていません。 個人を識別するための名前など、失明した人々(世界)には、必要がないからです。 化学物質が氾濫して、今までなかった、いろいろな未知の病気が、発生している今日、こんな日が、いつか来るかも知れません。 そんな時、いったいどうしたらいいのでしょうか? 法を新しく規制したりしたら、白の闇の世界も何とかなるものなのでしょうか ただひとつ、彼の原作の特徴らしいのですが、会話の「」(括弧)がないのは、読みにくかったです(^^;。 文中、不適切な表現の箇所があるようでしたら、ご容赦ください。 映画「ブラインドネス」の感想 |