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「半落ち」   
横山秀夫   03.04.10
    


請われて妻を殺した警察官は、死を覚悟していた。
全面的に容疑を認めているが、犯行後2日間の空白については口を割らない「半落ち」状態。
男が命より大切に守ろうとするものとは何なのか。
感涙の犯罪ミステリー。 (「MARC」データベースより)


面白かったです。
「深追い」に続いての横山さんの警察物でした。

今回は、警察内部での軋轢と共に、検察、弁護士、裁判官と、より多くの人が関わり合っています。
章ごとに、その関係者の一人一人にスポットライトを当ててゆく趣向で、その人の立場による考え方に共感もし、反発もしながら読み進められました。
その上、空白の二日間の謎がいったい何だったのか、興味が最後まで続きました。
この著者の書く警察物は、リアリティーがあり、しかも、杓子定規でない人間らしい暖かみが感じられていいですね〜。

ラストは、わたし的には、ちょっと物足りない気がしました。そこまで強い動機になり得たかどうか。ちょっと弱い気もします。ですが、ラストまで飽きさせずに惹きつける筆致は、すばらしいです。

実は、この作品、何かと騒ぎになっていました。それは、直木賞の選考会上で問題になったそうです。
なるほど、ストーリーの核心部分で問題になるところがあったようですが、実際には、その判断にはふくみをもてるようなので、一概に間違いではないというところに落ち着きそうです。(ネタバレになるので詳しくは書けません(^^;)
私としては、リアリティーを追求するには問題になっても、読んでいる分にはあまり気にならない事のように思いましたけど。