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「症例A」
多島斗志之 03.09.27
私を解く鍵は・・・あなた。
亜左美・17歳
榊・精神科医
広瀬・女性臨床心理士
三つの視線が交わる果てに、光は見いだせるのか?
かつてない繊細さで描きだす、
魂たちのささやき。
7年の歳月をかけて到達した最高地点。
(「MARC」データベースより)
精神病院が舞台です。
改めて、大変な病気だと思いました。
それは、患者も大変ならば、治療に当たる、医者や、看護婦も、また、大変だということです。
驚いたのは、精神科医というと、フロイト。フロイトというと、精神分析、そして夢判断。なのですが、それが、もう過去の話だと言うこと。
今は、精神分析自体を疑問視する医者が多いのを初めて知りました。
それに、フロイトは、トラウマを一度は提唱していたのに、一転、否定していたと言うことで、それには、顧客の事情をおもんぱかってのことだったとか。これにも、少々がっかりですね。
また、この本によって、他にも色々なことを知りました。
まず、精神病の確定診断の難しさ。
その人、個人個人によって、分裂病か、境界例か、多重人格なのか、判断が難しく、その判断が間違っていると、取り返しがつかなくなってしまうということ。境界例という病名も初めて知りました。
そして、精神科医の自殺の多さ。
専門家なのだから、患者に左右されることはないと思っていましたが、やはり、医師にも人間のもろさがあって、自殺にまで至らなくても、家庭崩壊するのも、少なくないらしいです。
ストーリーは、精神病院と、博物館との2方向から進んで行きます。
いつ、どうやってこの二つの話が交わってくるのか。読んでいてドキドキと飽きさせません。
惜しいのは、途中に、多重人格の話が出てくるのですが、この話が、非常に長いことです。
確かに、多重人格については、興味深いですが、どちらかというと、ミステリーに面白さを感じてしまう私には、ちょっと長すぎました。
しかし、これはこれで、また、別の話が書けそうなほど、充実しているとは思いましたが・・・。
重い内容でもありますが、とても分かりやすく書かれているので、読みやすい本でした。