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「オクシタニア」
佐藤賢一
信ずるべきは正統か、それとも異端か。
神に挑む男。神に迷う女。神を疑う男。
13世紀南フランス。
豊饒の地<オクシタニア>に繁栄を築いた異端カタリ派は、
北部騎士とフランス王軍勢をいかに迎え撃つのか。
トゥールーズ名家の御曹司エドモン。
彼の妻となるジラルダ。
北部勢力の侵攻に抗するトゥールーズ伯ラモン。
三人の運命が出会ったとき、
地上の快楽と苦悩をめぐる孤独な闘いが始まる。(帯より)
13世紀、フランスで起こった宗教戦争の壮大なる物語です。
2段組の600余ページ!(^^;
読み始めたのが、年末で、慌ただしい時期でしたので、本当に少しずつしか読めず、読み終えられるものなのか、我ながら心配しました(^^;。
でも、この蕩々たるストーリーテリングは、どうでしょう。
遅読の私も、ようやくこうして読み終えることが出来たのでした。
まずは、物語の発端として、シモン・ド・モンフォールの十字軍遠征があります。何の野心もないただの田舎領主だった彼が、1209年、世のしがらみから異端との戦いに駆り出され、あれよあれよという間に無敵の軍隊の長として活躍するのです。
と、ここまでが、北部騎士の話。そして、ここからが、薔薇色の都、オクシタニアでの話になるのですが、北部騎士と、南部騎士を分かりやすくするために、方言が入ります。それが、まさしく、関西弁!(^^)
この言葉の違いで、一目で、どちらの物語なのがすぐに分かるので、助かりました。でも、どうなんでしょう、関西弁。私は、関西在住なので、読みやすかったですが、他の地域の人は、読みにくいかも知れませんねぇ。
シモンがこの物語の主人公だと思っていると、違っていました。
第2章からが、メインです。名家の息子エドモンと、その幼なじみで、彼の妻となるジラルダ。そして、トゥールーズ伯ラモン。
彼らの宗教と戦い、そして、悲しく苦しい人間模様が始まるのです。
異端宗教カタリ派の教義は、最後まで納得出来ませんでした。
この世は、むなしいものと説くこの宗教には、未来は見えません。子孫を残すことを禁じている宗教など、滅びるのも必定ですよ。
それも、正統教会の堕落が原因なのでしょうけれど・・・。人間は、権力を持つと、堕落するんですねぇ。
ラストは、一気に読んでしまいました。エドモンの優しさに涙が誘われます。彼のような人に愛されたら、本当は幸せなはずなのに、幸せゆえにそこから逃げ出してしまうジラルダ。なんて、人間って、悲しいのでしょう。
長時間掛けて読んだので、時として、人脈を見失ってしまいました(^^;。人物相関図とかが書いてあったら、とても便利だったろうにと、つらつら思いました。 (2004.01.21)