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「グロテスク」    
桐野夏生  
    
光り輝く、夜のあたしを見てくれ。
堕落ではなく、解放。
敗北ではなく、上昇。
昼の鎧が夜風にひらめくコートに変わる時、和恵は誰よりも自由になる。
一流企業に勤めるOLが、夜の街に立つようになった理由は何だったのか。(帯より)


読み応えたっぷりでした。しかも、読後感はよくありません(^^;。読後感どころか、途中読み進みながらも、嫌悪感が背筋を上ってきます。

グロテスク・・・まさしく、その通りです。この偏った人物像はどうでしょう。でも、それは、決して、現実の世界と大きくかけ離れているというわけではないのです。
それはむしろ、彼女たちを寄せ集めたら、普通の人間になるのではないかと思うほどです。
ということは、逆に、彼女たちは、純粋なのかもしれません。
人間の持つある面を純粋培養したら、彼女たちのようになるのかもしれませんね。
怪物的な美貌を持つユリコ。ユリコの存在により、自分を追いつめる姉。上の階級を目指しながらもそれになりきることの出来ない和恵。実は、努力の人ミツル。それぞれみんながすごくグロテスクなのです。
それらは、私の中にもあるもので、それを見せつけられることで、読みながら嫌悪を感じたのでしょう。

なかでも、理想の姿を追い求めて、それに決して手の届くことのなかった和恵の末路は悲惨です。彼女の話は、あの「東電OL殺人事件」を参考にしていると思われますが、自分の本当の姿が見えないことほど怖ろしいことはないですよね。
でも、何かの歯車が外れてしまったら、誰でも、こうなる危険性をはらんでいるのかもしれません。

それにしても、長いです、この話。
この4人の女性の話は、メインですのでまあいいですが、チャンの話はこの際、割愛した方が、すっきりと読めたような気がしますけど、どうでしょうか。

あまりにも広がった物語の結末をどうつけるのかと思っていたら、アッと驚きの収束。
そう来ましたかと驚きました。でも、ここまであからさまに綴ってきた結末がこうなるのも必然かもしれません。 (2004.02.10)