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「かえっていく場所」    
椎名誠  



東京・自宅の屋上、沖縄のホテル、
モンゴル、スコットランド。世界各地で・・・。
時を変え、場所を変え、考える様々な出来事。
人生に訪れる幾多の邂逅と別離、歓びや悲しみ。
心模様を描きつづけた、私小説の決定版。(帯より)


久しぶりに読みました。椎名誠の私小説。
大好きなんですよね、椎名さんの本。
たくさん出版されていますが、私もたくさん読んでいます。
でも、最近は、ちょっとご無沙汰かな。

彼は、旅行記が多くて、私はとりわけ孤島とか、辺境の地に行く彼の話が好きでした。
そこでは彼は、仲間とワイワイおいしいものを豪快に食べ、おいしいお酒をこれまた豪快に飲んでゆくのです。

ただ、今回のこの本は、少々趣が違います。
確かに、たくさん旅行にも行きますが、今までが、夏の季節だとすると、この本は、秋の季節ように、物寂しいのです。
今まで自由奔放に仕事をしてきた彼が、ふとまわりを見回すと、妻も子供も、自分の居場所を見つけてしまっているという感じ。
それが、彼自身も寂しいのだろうし、読んでいる私も、寂しいのです。
子供や、妻の自立は、一般には望まれることなのだろうけど、実際に自立してしまうと、むやみに寂しく感じるのは、私自身が、自立していない故でしょうか・・・?
それにしても、彼の子供たち、自立しすぎ・・・(^^;。

「アザラシのためのコンサート」この話を読んでびっくりしました。「フィオナの海」という映画があって、スコットランドに住む女の子と、アザラシの話なのですが、その様子が、そっくりなのです。本に出てくる女性の名前も、フィオナだし、本当にびっくり。まあ、その地方には、フィオナという名前が、一般に多いのかもしれませんが・・・。それにしても、冷たい海にぽっかりと浮かぶアザラシの頭。なんか、うれしいですね〜。

「雪山の宴。キタキツネの夜。」は、この本の中で、一番心がほのぼのする家族団らんの様子が書かれています。やっぱり家族が集まるっていいことだなぁと、人ごとながら心が和みます。
でも、その代わり、家族がまた別々の生活に戻ってゆくところでは、寂しさで胸がいっぱいになりました(^^;。 (2004.02.17)