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「溺レる」    
川上弘美  




今が、過ぎる。こうして二人、
つながっているのにーー
一緒にいてもひとりひとりであることが、さびしい。
「アイシテルンデス」、肝心なときに言えないのは、なぜだろうーー
「蛇を踏む」の芥川賞作家が描く大人の恋、八景。
待望の傑作掌編集! (帯より)


この小説集は「センセイの鞄」のセンセイとツキコさんのような大人の恋の話が8編。

ちょっとした情景を淡々と描いているにもかかわらず、それがいやにエロティックです。ギラギラとした若い情熱よりも、こんな感じの恋って、味がありますね〜。

表題作の「溺レる」の「ミチユキ」とか「チクデン」とか「アイヨクにオボレル」とか、言っていることは凄いのに、カタカナで表すと、どことなくユーモラスで、視点が客観的になって、面白いですね〜。
ここら辺のセンスの良さは、川上弘美さん、ならではですね。

昔、海辺の親戚の家に行ったときに大量に食べたシャコの味を思い出した「さやさや」。
「アイシテルンデス」なんてこと、言いたくてもなかなか言えない「神虫」。
姦通によって不死になるなんて、なかなかしゃれの分かる神様だこと!それなら私も・・・?「無明」。

よいですなぁ〜〜。 (2004.05.04)