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「繋がれた明日」
真保裕一
この男は人殺しですーー。
仮釈放となった中道隆太を待ち受けていた悪意に満ちた中傷ビラ。
いったい誰が何の目的で?
孤独な犯人捜しを始めた隆太の前に立ちはだかる”障壁”とは?
”罪と罰”を問うサスペンス巨編(帯より)
暗い話でした。
読みながら、刑務所のあり方とか、刑の意味とかを考えてしまいました。
日本の刑は、懲罰刑ではなく教育刑ですが、その教育が、うまくなされないまま、仮釈放になっているようなのがすごく気になりました。
主人公、隆太は、獄中に6年間いたにもかかわらず、未だに、自分の刑に納得せず、被害者や、自分に不利な証言をした男に対して不信感を持ち続けています。
殺人を犯したこと自体には深い反省をもっていて、家族にはこれ以上の迷惑を掛けないようにと気を遣い、出獄後の新しい生活を大切にしていこうという気持ちももっています。しかし、彼は、彼を取り巻く色々な困難な出来事によって、また、過去の闇の方へと目を向けてしまうのでした。
あまりにも彼にとって、酷なことが待ち受けていた外の世界ですが、彼の過去への考え方には、抵抗がありました。 彼は、彼を支えてくれる周りの人たちの努力によって、かろうじて救われたのだと思います。
途中で、彼の恨み辛みが、何回も繰り返し出てくるので、読みながら本当に滅入ってしまいました(^^;。
それにしても、反省をしなくても時間が経てば、ところてんのように獄を出され、もっと要領のいい人間は、上辺だけの改悛の情を演じて、定められた2/3の刑期で、普通の生活に戻ってきてしまう。これが、刑務所の実態なのでしょうか?
つい最近も、出獄して数日で、通りすがりの見ず知らずの女性を拉致して殺すという殺人事件がありました。ちょうど、この本を読んでいたところだったので、ますます、考えさせられてしまいました。
もう一つ思ったことは、被害者やその家族へのケア。これは、絶対に必要ですね。事件が心の傷となって、一生を棒に振ってしまう方々もいることでしょう。こちらも、積極的にセラピーを受けられるようなシステムに早くなって欲しいものです。(2004.07.22)